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連載企画

世界の"世界遺産"から

第90回 ご存じですか、ビートルズの故郷は世界遺産なんです! 2017年3月20日

イギリスのリヴァプールへ行ってきました……と聞けばおそらく、多くの人がビートルズを思い浮かべることだろう。 (さらに…)

第89回 ヴェルサイユ宮殿の最後の主に、もっと光を! 2017年2月24日

ワケあってここしばらく、フランス革命について猛烈に勉強しなおしている。 (さらに…)

第88回 貴重な生物と美酒待つ奄美大島へ。 2017年1月24日

雪のない正月から一転、大寒波襲来を受けて青森県内は真っ白に染まったようだ。というわけで今回は、心ばかりながら温もりある旅の記憶をお届けしたい。鹿児島県奄美大島である。 (さらに…)

第87回 旅は遮光器土偶とともに。 2016年12月22日

ふと気になって今年のフライト数をチェックしてみたら、70回も飛行機に乗っていた。新幹線での移動を加えたら、おそらく100回以上。すなわち、50回は旅に出ていることになる。夜の東京パトロールがなかなかできず、なじみの飲み屋さんに不義理を重ねている切ない状況もいたしかたあるまい。 (さらに…)

第86回 古代の都は現代の癒やしの地……。 2016年11月22日

京都とならぶ、日本の世界遺産密集地帯の奈良では現在、「飛鳥・藤原の宮都とその関連資産群」が暫定リストに記載されて未来の登録を目指している。 (さらに…)

第85回 リビアのあの世界遺産は今……。 2016年10月27日

2016年7月、トルコのイスタンブールで開催された第40回世界遺産委員会で「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」ほか21件の資産があらたに世界遺産として登録されたが、同時に危険遺産リストも追加となった。 (さらに…)

第84回 世界遺産的お宝集結。大英博物館のすごさとは?! 2016年9月29日

前々回、前回に引き続き、イギリスのお話を。というのも、この星に点在する世界遺産群のかけらが集結、といっても過言ではない場所があるから。1759年開館の大英博物館だ。 (さらに…)

第83回 世界遺産の真ん中で旨しビールを飲む 2016年8月23日

前回、イギリスのストーンヘンジをご紹介したが、そこから30kmほど離れた場所にあるエーヴベリーの環状列石もまた、皆さまのお心に留め置いていただきたい世界遺産である。 (さらに…)

第82回 大地に埋もれたままのイギリスの環状遺跡 2016年7月25日

大方の予想を覆し、イギリスのEU離脱が決定となった。実は昨年、彼の地の世界遺産関連で発見があったのだが、歴史的な転換期を迎えるなか、関係者以外は記憶が薄れてしまったかもしれない。 (さらに…)

第81回 佐渡でふれた黄金色の夢の名残 2016年6月29日

2015年に長崎の軍艦島や鹿児島の旧集成館ほか、8県にまたがる施設、史跡が「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録されたのは記憶に新しいが、暫定リスト記載のなかにはもう1件、近代産業に関わる資産があるのをご存知だろうか。 (さらに…)

第80回 久し振りに上野に行ってみませんか。 2016年6月1日

タイトルの「久し振り」が通じるのは、おそらく40歳前後から上の方々ではないだろうか。若い世代では今や、上野駅に行ったことがない人もいそうな気がする。 (さらに…)

第79回 煙なたびく桜島とともにある鹿児島の世界遺産 2016年3月26日

青森県をひっくり返すと、鹿児島県の形になる。数年前に共同で行われたイベントの際に知った“事実”は、りんごとさつまいもを合わせたパイの旨さとともに衝撃的だった。 (さらに…)

第78回 ブルゴーニュのワインと青森の酒もテロワールが育てる。 2016年3月4日

「テロワール」。ワインにさほど詳しくなくても、その言葉を耳にしたことがあるかと思う。 (さらに…)

第77回 007が案内するスリリングなイギリス世界遺産 2016年1月22日

「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」、はたまたお子さんと一緒に「妖怪ウォッチ」。この年末年始、映画館に足を運ばれた方は多いのではないだろうか。 (さらに…)

第76回 何度歩いても発見ありの白神山地 2015年12月22日

春夏秋冬、これまで10回近く青森県の世界遺産・白神山地を歩いている。 (さらに…)

第75回 富岡製糸場で工女たちの笑顔に思いを馳せる 2015年11月30日

群馬県の富岡製糸場が2014年に世界遺産登録となったのは、まだ皆さまの記憶に新しいことと思う。 (さらに…)

第74回 バルタン星人もかなわないモンゴルの秘技 2015年10月29日

前回に引き続き、モンゴルのお話を……。ユネスコの無形文化遺産には、ゲルの暮らしに加えて「モンゴルの伝統芸術のホーミー」「モリンホール(馬頭琴)の伝統音楽」も登録されている。 (さらに…)

第73回 茶の間を懐かしく思うモンゴルのゲルでの暮らし 2015年9月25日

最近、相撲のチケットが以前よりも取りにくくくなっているそうだ。実際、「久々に相撲を見てきた」という話を頻繁に聞く。 (さらに…)

第72回 グラバー氏は世界遺産登録の立役者! 2015年9月11日

三菱重工業長崎造船所ほか8県にまたがる施設、史跡が、「明治日本の産業革命遺産」として世界遺産に登録された。 (さらに…)

第71回 文化遺産で占う運命はいかに? 2015年7月27日

アルコール飲料が欲しい。日本でそう思ったら、たとえ夜中でも早朝でも応えてくれる場所がある。 (さらに…)

第70回 オスマン朝に圧倒されたトプカプ宮殿 2015年6月23日

前回に引き続き、トルコのお話をば。 (さらに…)

第69回 トルコ・イスタンブールにて衝撃の大発見?! 2015年5月21日

わたくしの呑み仲間に、竪穴式スタイルの家を建ててしまったほどの縄文好きがおり、酒が入るとうっとりした表情で縄文愛を語る。 (さらに…)

第68回 沖縄の世界遺産はサァ…… 2015年3月24日

前回に引き続き、沖縄のお話を。 (さらに…)

第67回 沖縄の世界遺産で出会った「なにか」 2015年2月26日

沖縄の世界遺産「琉球王国のグスク及び関連資産群」を巡ったのは、10年前のこと。 (さらに…)

第66回 萩の町で幕末の志士たちの存在をリアルに体感 2015年1月27日

吉田松陰の妹、文を主人公にした大河ドラマ「花燃ゆ」がスタートした。舞台の中心となるのは、山口県萩市。 (さらに…)

第65回 世界遺産登録を願い遮光器土偶が各地を視察!? 2014年12月16日

7件の登録資産と、暫定リスト記載を含めた5件の候補。今年もあちらこちらへと放浪しながら、世界遺産コレクションの充実に努めてきたが、その旅のすべてにつきあってくれた人がいる。 (さらに…)

第64回 神々とともにあるバリ島の世界遺産。その2 2014年11月25日

年末が近くなり、朝、夕の冷え込みが厳しくなるなか、熱帯に逃避したい気持ちが増す今日この頃。 (さらに…)

第63回 死海を未来の世界遺産に! 2014年10月23日

少々重めの話が続いてしまったが、イスラエルの旅には心浮き立つ楽しみが決して少なくない。 (さらに…)

第62回 世界遺産を通して垣間見るイスラエルの過去と今 その2 2014年9月29日

「乳と蜜が流れる」。イスラエルで食事のたびに胸をよぎるのは、聖書の一文である。 (さらに…)

第61回 世界遺産を通して垣間見るイスラエルの過去と今 その1 2014年8月19日

この原稿を書いている8月中旬現在、イスラエルとパレスチナ自治区ガザとの戦闘は、まったくおさまる様子が見えない。 (さらに…)

第60回 長崎の教会群、世界遺産登録へ前進! 2014年7月28日

前回に引き続きバリ島のお話をと思ったのだが、嬉しいニュースが飛び込んできた(バリは再訪の予感ありなので、未来にまたあらためて)。 (さらに…)

第59回 神々とともにあるバリ島の世界遺産。 2014年6月25日

この星に数ある世界遺産に決して優劣はないものの、感動のもたらし方は多様である。 (さらに…)

第58回 光輝く黄金よりも素晴らしきものは……。 2014年5月23日

前回に引き続き、カナダ・ユーコン準州のお話を……。 (さらに…)

第57回 夜空を舞うオーロラは世界遺産ならぬ宇宙遺産! 2014年3月31日

プラネタリウムやテレビで何度も見ているし……と少々油断していたのかもしれない。 (さらに…)

第56回 彦根城下にて井伊直弼を偲ぶ その2 2014年2月27日

前回に続き、世界遺産候補「彦根城」の15代目の主だった井伊直弼について、少々語らせていただきたい。 (さらに…)

第55回 彦根城下にて井伊直弼を偲ぶ その1 2014年1月30日

京都をはじめ歴史妄想を楽しめる場所は日本各地に多々残るが、なかでも個人的に気に入っているのが琵琶湖周辺である。 (さらに…)

第54回 世界遺産の“和食”を召し上がれ。 その2 2013年12月26日

正式に登録が決定いたしましたね。いやあ、めでたい、めでたい。 (さらに…)

第53回 世界遺産の“和食”を召し上がれ。 その1 2013年11月27日

以前、縄文風の潮汁なるものを料理研究家の先生に作っていただいたことがある。 (さらに…)

第52回 ヴェルサイユで見た、甘美な夢。 その2 2013年10月25日

妄想天国ヴェルサイユ宮殿の礎は、1624年に建てられた猟館。 (さらに…)

第51回 ヴェルサイユで見た、甘美な夢。 その1 2013年9月26日

ナポレオンの生涯、帝政ロシアの激動、ポーランド分割の悲劇。西洋史における知識の多くをわたくしが得たのは、間違いなく池田理代子先生の作品である。 (さらに…)

第50回 ああ、オーパーツは永遠の憧れなり 2013年8月29日

1700万ものダウンロードを達成したパズドラ(ご存知ですか、大人気のスマホのゲームです)に、はまりまくりの夏の日々である。 (さらに…)

第49回 あんまり暑いので特別編~敦煌の世界遺産級スイカ 2013年7月24日

ここのところ頻繁に青森へと帰る機会に恵まれているが、日によっては東京と比べ、気温差10度近くということも。 (さらに…)

第48回 インドの風に吹かれ心、縄文の頃へ 2013年6月26日

タージ・マハルが建つアーグラーの町から車で30分ほど、約40キロの距離に位置するのが、インドの世界遺産のひとつ、16世紀の都ファテーブル・シークリーである。とはいえ、初めて名前を聞くという方も多いのではないか。かく言うわたくしも、タージ・マハールへの行き方を調べていて初めてその存在を知った。それもそのはず、都として賑わったのは1574年~1588年のわずか14年間だけだったのだから。

遷都を命じたのは、ムガル帝国3代皇帝アクバル。なかなか後継者に恵まれずにいたが、とある聖者に相談したところ、世継ぎの誕生を予言され、実際、その言葉通りに。というわけでアクバルは、アーグラーから聖者の住む場所に都を移したのだそうだ。で、一説によれば、例年以上の酷暑と水不足が続いたため、再びアーグラーに戻っちゃったのだとか。引っ越しのたびに敷金礼金でひいこら言っている身としては、なんとも羨ましいお話。

ダイナミックなお金の使い方はさておき、アクバルという人はインドに根づいていたヒンドゥ教文化を駆逐することなく、自らが信仰するイスラム教との融合を目指したのが評価されている。このファテーブル・シークリーの建物も、イスラム色とヒンドゥ色がともにほんのり香る、不思議な魅力があった。それとともにもっとも印象的だったのは、吹く風のやさしさ。そのまま寝転がって、お昼寝したいくらい気持ち良かったのである。タージ・マハルもそうだったが、宮殿をはじめかつての為政者が選んだ場所はいずこも、実にいい風が吹いていたのが忘れがたい。煌びやかな宝石同様、インドにおいて風はなににも代えがたい宝だったのではないか。などと妄想しながら、縄文時代に思いが飛ぶ。というのも実は旅の前に、全国各地の縄文遺跡をまわっている方から、たいそう興味深い話を聞いていたがゆえ。

縄文遺跡があるのは確実に、日当たりが良く、川に近いが増水のおそれがないエリア。周辺を歩けば、なるほど! と、場所を決めた縄文人たちと気持ちが重なるという。高級住宅街も少なくない。たとえば東京なら、あの田園調布にも縄文の名残があるのだ。1000年経っても、1万年経っても、人間が心地よさを覚える場所というのは、そうそう変わらないのでしょうねえ。となれば九州をはじめ南のエリアでは、インド同様に涼しい風が貴重だったのかも。三内丸山をはじめ、北はどうだったのだろうか。いずれにしても、各地の縄文遺跡で一升瓶を空け、そのまま眠りこけたならばきっと、心地良い風のなかですてきな夢が見られそう。今度三内丸山でこっそり試してみようかしらん。

とびっきり心地良い風が通り抜けたパンチ・マハルは遊技場だったとも。
写真:松隈直樹

謁見のための建物とされる、ディーワーネ・ハース。
写真:松隈直樹

ディーワーネ・ハース内部。一説によれば、この柱の上に玉座があったとか。
写真:松隈直樹

第47回 美しさに泥酔、のタージ・マハル 2013年5月27日

きれいだと言われる場所を訪れ、予想したほど心が動かないことは少なくない。 (さらに…)

第46回 雪深い白神山地も、そろそろ春ですね。 2013年3月25日

去年に引き続き、今年の冬も酸ヶ湯温泉の積雪量が一時期、メディアで連日のように取り上げられていた。 (さらに…)

第45回 南アフリカは世界遺産級の美味いっぱい。 2013年2月25日

日本海、太平洋、津軽海峡、そして青森湾。日本で唯一、4つの異なる海を持つ。声高には語られていないが、青森県が自慢すべきポイントのひとつだと思う。 (さらに…)

第44回 アフリカ大陸西南端、喜望峰に吹く風は。 2013年1月28日

Cape of Good Hope。喜望峰の発見により、南回りの航路は明るい未来が見えた。そう考えればいかにもふさわしく、たいそう美しい表現だとずっと思ってきた。しかし今回、1488年にこの岬を発見したバーソロミュー・ディアスは当初、「嵐の岬」という、船旅にとってはあまり芳しくない命名していたと、恥ずかしながら初めて知ることとなった。このあたりは頻繁に強風にみまわれる。また、大西洋とインド洋がぶつかる海域でもあるため、かつて座礁した船は数知れずといっても過言ではないとか。

実際、小高い岬の突端を目指したのだが、快晴の穏やかな天気にも関わらず、時折、存在感のある風が吹いて、強度の高書恐怖症(なのに冒険好きなハタ迷惑)であるへたれはびびりまくった。とはいえ、地元の名誉のために付け加えておこう。道にはきちんと階段が整備されているし、わたくしは容易に飛ばされるような華奢な娘ではないし、ほかの観光客は笑顔ですたすた登ってらっしゃいました。そんな頼りない被験者の証言で申し訳ないが、場合によっては風速50メートルという驚異的な数字も出るそうだ。

この風が実に気持ち良く澄んでいて、しかもひんやりしている。かつてヒマラヤ山中を歩いていた際、エベレストをはじめ8000メートル級の山々から降りてきた風(もう少々湿り気を帯びていたが)に思いを馳せていたところ、なんと南極生まれとのこと。南極から吹く風。数多の旅人たちが通り過ぎた海を眺めつつ、これまたロマンチックな響きだわと、妄想家がうっとりしたのはいうまでもない。訪れたのは、現地の春先にあたる9月末。アフリカと聞けば「灼熱の」という枕詞が脳裏に浮かぶが、大陸の端っこであるケープタウンや喜望峰周辺は、とても涼やかだったのだ。ことに夜には、薄着でいては凍えるほどの気温に。しっかり日に焼けるほど太陽の光は温もりあふれていて、そのアンバランスが面白かった。

実は喜望峰があるケープ半島の一部は世界遺産に登録されているのだが、歴史的な発見に関連したワケではなく、扱いは自然遺産。先端ならではの個性的な気候と風により、この地域に育つ9000種類にも及ぶ植物の約70%が、固有種であることが認められたから。半島全体の緑の群は、風に負けじとばかりへばりついているかのよう。なかには、夏にありがちな自然発生の火事を経て種子が芽を出すファイターも。彼の地の人々の不屈の精神にも似ていて、感慨深かった。

世界遺産の植物のみならず、実はこのユニークな環境がぶどうの栽培に適しており、最近は日本でもお馴染みのうんまいワインが醸されているのだが、のんだくれがたっぷり満喫した美味に関しては、引き続きまた次回に。

ここが喜望峰の突端!
写真:松隈直樹

子どもたちの服装が気候を物語る。
写真:松隈直樹

世界遺産の番人のような野生のダチョウ。
写真:松隈直樹

第43回 南アフリカ・ロベン島に見た希望。 2013年1月8日

南アフリカ共和国第2の都市ケープタウンの沖合、約12キロの距離に、ロベン島という小さな島がある。アパルトヘイトの時代、島全体が要塞のような監獄となり、ネルソン・マンデラ氏をはじめとする政治犯が閉じこめられていたことから、負の証しとして世界遺産に登録された。 (さらに…)

第42回 誰か故郷を想わざる in マカオ。 2012年11月27日

ポルトガル料理が食べたいっ!
ただただ食欲のみにかられて出かけたマカオで予想外に魅せられたのは、教会や広場など世界遺産にも登録されているポルトガル統治時代の名残だった。 (さらに…)

第41回 乙女恥じらい頬染める、屋久島の森。 2012年10月17日

その様子をごく至近距離で捉えたとき、胸の鼓動が高まり、思わず赤面してしまったのを思い出す。幼い頃の青森市の景色でいうと、「奈良屋劇場」さんの前を通ってオトナな映画の看板がうっかり目に入り、ドギマギしながら見て見ぬふりしたときのような……いやいや、人さまには言えない、ピンクな裏道をのぞいたワケではない。世界遺産・屋久島の森に入り込んだときのことである。

まず圧倒されたのは、樹齢1000年を越える巨大な屋久杉の存在感。あまりの大きさに、自分の視点の物差しが狂ってきたのが、面白かった。それにも増してわたくしの目を釘付けにしたのは、多湿という恵まれた環境のなかで自由奔放、縦横無尽に歳月を重ねた根や幹だった。重力を無視して根が真横に伸び、空中に浮いている不可思議な光景も見られたが、これは以前その下にあった木が朽ちてしまい、跡形もなくなったためなのだそうだ。根は地中、幹は天を目指して進むという常識が、屋久島の森ではあっけなく覆されていく。

木々が互いに抱きあい、一心同体化した図もそこかしこに。情念を感じさせるほどしかと絡み合うその姿は、閨房での睦み合いを彷彿とさせた。定期的に皮を脱ぎ捨てるという、ヒメシャラのつるりとした肌がまた、たいそうなまめかしい。地面に複雑な模様を描いた根をよけるように歩みを続けると、緑の苔に覆われたかつての大木の切り株から、顔をのぞかせている小さな芽が。思わず涙があふれてきた。

屋久島の森と聞いて誰しもがまず思うのは、縄文杉であろう。楽ではない山道を1日かける往復の時間も相まって、その姿を目にすれば達成感があふれる。しかし、それだけで終わってしまう旅人が実に多いという嘆きの声を、少なからず耳にした。ほんのわずかの滞在で、縄文杉だけを心に刻んで帰るのはもったいない話だと。白神山地同様、屋久島の醍醐味も、「生きている森」を実感することにある。もしこれからお出かけになるのなら、ゆっくり、じっくりと森を歩き、混沌としたその世界を満喫していただきたい。さらには、妄想して頬を赤く染めていただきたい。でもって夜は、地元の焼酎「三岳」をお湯割りをちびちび。島の水が違うせいだろう、東京、はたまた旅の拠点となる鹿児島で飲むのとも、また異なる旨さなのである。歩き疲れた体に「三岳」のじわじわしみこませた後は、甘く切ない夢を見るのだ。

*昭和青森ひとくちメモ
かつての「奈良屋劇場」さんは、オトナの映画専門館。その看板によって少年少女は「エロス」の匂いを微かに感じとり、心の成長が健やかに促されたのである。「宇宙戦艦ヤマト」がなぜかここで上映され、作品そのものよりも「奈良屋に入る!」ことに鼻血が出そうなほどの興奮を覚えた子どもたち(わたくしを含む)は少なくなかった。

屋久島心中
杉の木に追いすがるかのように絡みついたヒメシャラ。
写真:松隈直樹
芽
混沌の果ての新たないのち。
写真:松隈直樹

プロフィール

山内 史子

執筆者一覧

ライター、紀行家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」(小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。2016年6月に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)を上梓。

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