ホーム > 連載企画 > 第2回 土器片だけじゃない大平山元遺跡

このページの本文

連載企画

FAN FUN! JOMON FAN!!

第2回 土器片だけじゃない大平山元遺跡 2018年9月10日

第1回新しいウィンドウが開きますの縄文をモチーフにした青森ねぶたの送り絵、きれいでしたね。私も見に行きました。「んだびょん縄文新しいウィンドウが開きます」で紹介されていた「縄文せんべい」ももらいました。そんな夏も終わり過ごしやすい秋へと移りますが、みなさんにとって秋は、何を思い浮かべますか? せんべいつながりで食欲の秋などいろいろイメージできますが、やはり縄文ですから収穫の秋はどうでしょう。クリ等の木の実や果物のほか、川ではサケが遡上します。秋サケ、いいですよね、やはり食欲の秋ですかね。
今回紹介する大平山元(おおだいやまもと)遺跡の近くを流れる蟹田川でもサケの遡上を見ることができます。川面を見ていると、たまに、キラッと魚体が輝き、泳いでいることがわかります。ちょうど2つの小河川が合流し蟹田川の本流になるところです。大平山元遺跡に住んだヒトは、そんなサケを狙ったのでしょうか。

さて、大平山元遺跡といえば日本最古級の無文土器片(写真1)ですが、今回は見方を変えて、土器片と一緒に見つかる石器を紹介したいと思います。いくつかの種類がありますが、それらの道具のセット(石器群)は、出土した代表的な遺跡の名前から神子柴(みこしば)・長者久保(ちょうじゃくぼ)石器群と呼ばれています(写真2)。それは、石刃(せきじん:同じサイズに意図された縦長の石のかけら、長さが幅の二倍以上あるもの)素材の各種石器(加工用の道具)、石槍(やり)状の石器の槍先型尖頭器(せんとうき)、刃の部分だけ磨いた石斧(せきふ)の刃部磨製石斧(じんぶませいせきふ)です。さらに石鏃(せきぞく:矢じり)もあります。特徴的なものは、複数の種類の刃部を合わせて持つ複合的な石器で、刃部には切ったものの痕跡(使用痕)とみられる光沢があります。また、石器類のほとんどが、遺跡付近の蟹田川で採取できる硬質頁岩(けつがん)を材料につくられています。
これらの石器からは、旧石器時代から続く伝統的な石器製作の技法を用いながらも、新しく工夫された石器が生み出された、縄文文化の始まりの頃の様子が見てとれます。

写真1 大平山元遺跡土器片

 

写真2 神子柴・長者久保石器群セット

 

いくつかの石器をご紹介します。どの石器も卓越した石器製作技術を用いて非常に精巧に製作されており、色や形の美しさから、少しオーバーですが「美術品」をイメージできるかと思います。石器の割り方(作り方)には様々な方法がありますが、たたく力の加減や道具、角度によって割れ方が変化します。石などのハンマーで直接叩いて割る方法や、ハンマーを押し当てて圧力で割る押圧剥離(おうあつはくり)等があり、使用目的によって使い分けています。押圧剥離は、細かく規則的な加工に向いていますので刃部を作る時にも用いられます。
典型的な石刃から紹介します。石刃は各種道具の素材として利用されましたが、そのままでも優れた石器です。写真3は切断面が接合したもので、背面には岩石の表面を残す大型の石刃です。写真4は石刃を用いた加工用の道具で、掻削器(そうさくき)と呼んでいます。動物の皮などについた肉等をそぎ落とす掻器(そうき)(a)と、物を切ったりする削器(さくき)(b)の刃部をあわせてもっています。大型の石刃を素材としたものです。

 

写真5は黒曜石製の掻削器で、黒色の輝きと形が美しい秀逸な石器です。ものを切る刃の部分は両方の側縁の下半部(c)、そぎ落とす刃の部分は下端部(d)にあります。黒曜石は青森県深浦町(ふかうらまち)産の原石を用いています。写真6は、掻削器にけずる用途が加わるものです。石刃の上の端に交叉状にけずる刃の部分(e)をもち、両方の側縁を切る刃の部分(f)、下端部をそぎ落とす刃の部分(g)に加工した彫掻削器(ちょうそうさくき)です。下端の刃の部分から使用痕とみられる光沢が確認できます。

 

写真7は削る刃の部分がある彫器(ちょうき)です。石刃を素材とし末端の左に刀の部分(h)を作り出しています。ほぼ全周に微細な剥離があります。

写真7 彫器
長さ6.9cm、幅2.2cm、厚さ1.0cm、重さ12.2g

 

別の石器も見てみましょう。写真8は石槍状の石器の槍先型尖頭器です。ナイフの様に使ったりもします。腹(裏)面は尖頭部と基部のみに加工がありますが、背(表)面の基部は入念な加工を施している頁岩製のものです。写真9は破損して一部が残っているものですが、黒曜石製です。さきほどの掻削器と同様に青森県深浦町産の原石を用いています。表裏に入念な加工が見られます。

 

写真10は石鏃です。2点とも二等辺三角形状を呈しています。全体的に厚みがありやや重量も重く、先端の尖りが弱いものの最も古い段階の石鏃です。

写真10 石鏃
(右)長さ2.7cm、幅1.9cm、厚さ0.8cm、重さ3.4g
(左)長さ2.9cm、幅1.9cm、厚さ0.7cm、重さ2.8g

写真3から10までの石器は外ヶ浜町大山ふるさと資料館に展示してあります。また、青森市の青森県立郷土館にも土器片や石器があります。
そうです、秋です、芸術の秋。「美術品」のように美しい石器をじっくり観察してみてはいかがですか。

(駒田透:外ヶ浜町教育委員会社会教育課)

プロフィール

FAN FUN! JOMON FAN!!

祝! 世界遺産推薦候補選定!!

世界文化遺産登録をめざす「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、各遺跡の担当者が青森県内の構成資産を紹介します。
自慢の逸品の解説や発掘調査のエピソードなど、現場が伝えたい縄文の魅力や遺跡ならではの楽しみ方をたっぷりご紹介! 遺跡に行きたくなること間違いなし!!
どうぞお楽しみに!!

本文ここまで