ホーム > 連載企画 > 第8回 トピック!是川石器時代遺跡で最近わかった漆利用

このページの本文

連載企画

FAN FUN! JOMON FAN!!

第8回 トピック!是川石器時代遺跡で最近わかった漆利用 2019年3月18日

八戸市の是川石器時代遺跡(以下、是川遺跡)は、縄文時代の終わりごろの集落遺跡として知られていますが、この遺跡を語る上で欠かせないキーワードに「漆」があります(以下、「漆」は樹液、「ウルシ」は木そのものを指します。)。
縄文時代は草創期・早期・前期・中期・後期・晩期の6つの時期にわけて説明されますが、約12,600年前の草創期には、ヒトはすでにウルシの存在を知っていて、その後約6,000年前の前期には、縄文の漆芸が確立していたと考えられています。その縄文漆文化の集大成ともいえる姿が、是川遺跡にあります。
現在、是川遺跡出土品のうち、土器や土偶、石器、木器など963点が重要文化財に指定されていますが、そのなかには漆塗りの土器や籃胎漆器(カゴ)、木胎漆器、樹皮製容器、弓、櫛や腕輪などの装身具など、多彩な漆塗りの製品があります。
そんな是川遺跡の漆文化ですが、最近の調査研究で、是川縄文人の漆利用がいろいろわかってきました。ここではそのうち赤色漆の使い分けなどを紹介します。

 

○赤い漆の使い分け
縄文の赤色漆は、鉄成分が多い「ベンガラ漆」と水銀成分が多い「朱漆」の2種類があります。朱漆の方が発色のよい鮮やかな赤色を得られます。
出土品270点を対象に弘前大学と共同で漆成分を分析したところ、約93%はベンガラ漆、残り約7%が朱漆で、櫛・腕輪・飾り太刀・籃胎漆器など、製品のなかでも装身具や祭祀具などに朱漆が使われていることがわかりました。
こうした使い分けは、漆を塗る時にもあるようです。是川縄文人は製品を仕上げる際に、3回から5回の重ね塗りをしていますが、朱漆を使う際は、下にベンガラ漆を塗り、最後にその上から朱漆を塗って仕上げています。最後に鮮やかな赤をみせる工夫は現代の漆芸でも行われています。

朱漆仕上げの飾り太刀

 

○朱の原材料はどこから?
朱漆の顔料は辰砂(しんしゃ)という石を原材料にしていますが、どこにでもあるわけではありません。青森県内では南端部の碇ヶ関などに鉱山があるようですが、是川遺跡周辺には辰砂鉱山はみつかっていません。
近畿大学・国際教養大学と朱の成分を分析した結果、是川遺跡で使われている朱は、青森県内の鉱山ではなく、北海道北部の北見・日高地域の鉱山のものと推定されました。現代には八戸-苫小牧間のフェリーがありますが、縄文人も似たルートを航海していたのではないかと思うような成果となりました。
また、朱は是川縄文人にとって遠方から入手する貴重品であったため、朱漆は装身具や祭祀具といった特別なものに多く使われたのかもしれません。

朱が入った小壺

 

是川遺跡の漆塗り製品は、八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館の常設展示室でたくさん公開しています。まだ見たことないという方は、ぜひ一度見に来てください!

(市川健夫:八戸市埋蔵文化財センター是川縄文館)

プロフィール

FAN FUN! JOMON FAN!!

祝! 世界遺産推薦候補選定!!

世界文化遺産登録をめざす「北海道・北東北の縄文遺跡群」について、各遺跡の担当者が青森県内の構成資産を紹介します。
自慢の逸品の解説や発掘調査のエピソードなど、現場が伝えたい縄文の魅力や遺跡ならではの楽しみ方をたっぷりご紹介! 遺跡に行きたくなること間違いなし!!
どうぞお楽しみに!!

本文ここまで