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第9回 三内丸山遺跡オリジナル!?「棒状土製品」のナゾ 2019年7月30日

三内丸山遺跡からは土器や石器だけではなく、まったく使い方のわからないさまざまなものが出土します。私たちはこれらの出土品を、土でつくられたものであれば土製品、石であれば石製品などと素材で分類し、形や模様などの特徴でさらに細かく分けていきます。その結果、さんまるミュージアムでは、有孔石製品(孔のある石製品)や、環状土製品(輪ゴムのような形の土製品)など、ちょっと難しい名前が付けられ展示されています。
その中に、棒状土製品というものがあります。粘土を棒のように整形して焼き上げたもので、大きさは5cm程の小さなものがほとんどです。最初に見たときには「なんだこれ?」と、まったく用途が推測できませんでした。しかし、それでは悔しいので、何か手がかりはないか細部の特徴をよく観察してみると、棒状に整形しているだけではなく、両端がきれいに平らにされた円筒状のものや紡錘形のものなど、しっかりとした規格に基づいてつくられていることが分かってきました。

棒状土製品 (縮尺不同 右から2番目長さ6.9cm/三内丸山遺跡)

 

ここで頭に浮かんだのが石棒です。石棒は縄文時代の特徴的な道具の一つで、三内丸山遺跡からも多く出土しています。中部地方や関東地方などでは男根を忠実に模倣したものがありますが、三内丸山遺跡など青森県内の遺跡から出土する石棒は円筒状を基本とし、両端が細くなった紡錘形のものもあります。
石棒の形態的特徴と棒状土製品のそれが類似しているのではないか…。そうであれば、小さな棒状土製品は石棒のミニチュアである可能性があります。

 

 

ミニチュア土器(三内丸山遺跡)

三内丸山遺跡からは棒状土製品の他にも器を小さく模倣したミニチュア土器が見つかっています。棒状土製品やミニチュア土器は他の縄文時代の遺跡からも見つかっていますが、三内丸山遺跡からの出土量はきわめて多く、その数は現在2500点を超えています。
ミニチュア土器について、「縄文人もままごとをやっていたの?」とよく聞かれますが、その大半がマツリに関連すると考えられる盛土から出土しているため、単なるおもちゃではない可能性が高いと思います。棒状土製品も、本家の石棒と同様の効力が込められていると考えられますが、極端に小さくしているという特徴があります。ミニチュアのように小さく分身するという行為の意味の一つは、お守りなどとして持ち運ぶことにより、その効力をいつでもどこでも発揮できるということが考えられます。縄文人も、狩猟などで危険な目に遭わないよう、現代人と同じようにお守りを身につけていたのかもしれません。

石棒と棒状土製品の本来の用途に迫るにはまだまだですが、棒状土製品に「石棒のミニチュアかもしれない」という新たな理解を加えられたことは私の大きな喜びでした。研究が大きく進展したわけではないのですが、こんなところに考古学の基本である物質文化を主に扱う学問のおもしろさがあるのではないかと感じます。

現在、さんまるミュージアムでは三内丸山遺跡から出土した石棒と棒状土製品を並べて展示していますので、ぜひ見比べてみてください。私の考えはいかがでしょう? 他にも、ミュージアムには何に使われたのか分からないものがたくさんあります。三内丸山遺跡でいろいろ考えることは、きっと楽しいですよ。
現在開催中の「あおもり土偶展新しいウィンドウが開きます」、こちらも縄文人の心の世界に触れるチャンスです!お見逃しなく。

さんまるミュージアム 石棒(右)と棒状土製品(左)

 

(岩田安之:青森県三内丸山遺跡センター)

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