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連載企画

縄文の風を感じてみませんか?-土岐 司-

第23回 パーソナルな旅行の楽しさを(その2) 2009年9月2日

訪れた国の言葉も知らない私が、なんで?と問われれば、その答えは一つです。「白神山地の素晴らしさを感じたいから」が答です。

多くの日本人は知らないうちに豊か過ぎる自然の中に埋没して、その価値に鈍感になっているように日頃から感じていた私でした。もちろん、私自身も鈍感族の一人であるのは言うまでもないことです。古今和歌集や万葉集、そして今昔物語には多くの詩歌や寓話が詠み込まれています。

「可愛い子どもには旅をさせよ」との故事を思い出しますが、さて・・・自分はどうだろうか。年齢を重ねるに連れて衰える感性と感動に対して鈍感に変化していくことを感じた時「自分を旅に連れ出す」ことを真剣に考えたのでした。

幾つかの発展途上の国々を訪れた経験は「自然と人」を見直す転機となりました。外国語の弱い私のコミュニケーションの手段は三本の小さなハーモニカです。現地の民謡や子どもの歌、世界共通の曲は言葉がなくても十分な大使の役割をしてくれます。フィリピンのミンダナオ島の南端でモロ海峡に面したタビナの砂浜でハーモニカを奏でていた時、村人や子どもが遠まきに物珍しもあったのだろうが随分長い時間聞いていてくれていた。一人の老人が近寄ってきて私に手を出し「タバコ、チョウダイ、ナ」と日本語で声を掛けてきた。通訳を介して聞いたところ、私たちは戦後初めて村に来た日本人なのだそうだ。何とも彼の「チョウダイ、ナ」は軍人にタバコをオネダリする言葉なのだろう。何とも哀れであり悲しい歴史が再現された瞬間であった。もちろんタバコを分かち合いながら眺めていたのは、日本のODAで破壊されたマングローブの林です。

♪モンテンルパの夜はふけて 募る思いやるせなさや・・・♪のメロディに忘れかけていた日本語を思い出しながら涙をしていた老人を忘れることはない。

森林を失い、海が荒廃して海辺漁業が成り立たないタビナの為にマングローブの植林を手伝いながら、私には豊かな森林のあることの有り難さと幸せを痛いほどに感じる旅を思い起こしている。

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プロフィール

土岐 司

1942年青森県生まれ

高校理科教員を38年勤め、2004年有限会社ヒーリングエコツアーPROガイド エコ・遊を設立。 教員在職中、白神山地を題材とした授業の中で、白神の自然を後世に残すという想いに目覚める。

会社設立より現在に至るまでのシーズン中(5月中旬~11月中旬)に白神を留守にしたのは片手で数えるほど。

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