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連載企画

縄文の風を感じてみませんか?-土岐 司-

第34回 兆し 2010年2月12日

モノトーンの世界という表現は手垢がついて使いたくない言葉です。あえて表現するならば「無彩色」の方が具体的なイメージを得やすいのが北東北の雪景色です。時として吹き荒れる猛吹雪は雪景色を覆い隠し私たちを強烈に拒みます。永い年月、そのような世界に棲む人々は吹雪の過ぎ去るのを息を殺すようにして待つのです。それが雪国に住む人の日常であったのです。

西目屋村は、そのような津軽の人々の生活の生きたサンプルのような集落ですが、今では道路事情の近代化で都市部の弘前とは40分ほどでつながるようになりました。1950年ころは、冬場になると弘前市内のデパート前には毛皮を売る農村部の人の姿が見られました。毛皮に限らず唐辛子や乾燥させた山菜や漬物も並びましたが、その多くは西目屋村の人たちだったのです。彼らが商いを始める季節は二月がピークだったようです。

今日は立春です。今年は穏やかな日差しがあり常の冬とは趣が異なりますが春を感じさせるものがあります。村人が動き出すのと、野山の木々が躍動感を感じさせる季節は同調しているようです。近代的な手法ではリンゴの枝の剪定作業も今頃ですし、山野の木々が水を吸い上げる兆しを見せるのも今頃です。見方によっては眠っているかに見える樹木がわずかに紅をおびて白い世界に存在感を感じさせるのも今の時期です。小さな流れのかたわらのネコヤナギの芽がふっくらと感じられることにも胸の高鳴りがあります。

季節の移ろいに鈍くなった私でも「春・ち・か・し」と感じられる風情があるのです。肉体の衰えを感じる幾つかの要素がありますが、命の躍動を感じ取れ幾つかもあります。年中花が見られる地方にも季節を感じ取れる何かがあるのでしょうが、北東北ほど明確ではないことでしょう。それだけに雪国の人たちは季節の変化に敏感です。農作業の始まりなど季節の移ろいを感じて動き出すのです。伝統芸能や郷土の祭りは、その代表的なものなのでしょう。今年こそは「北東北への旅」は、豊かな自然とともに北東北人の原点を探る旅にもなるのかもしれない。

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プロフィール

土岐 司

1942年青森県生まれ

高校理科教員を38年勤め、2004年有限会社ヒーリングエコツアーPROガイド エコ・遊を設立。 教員在職中、白神山地を題材とした授業の中で、白神の自然を後世に残すという想いに目覚める。

会社設立より現在に至るまでのシーズン中(5月中旬~11月中旬)に白神を留守にしたのは片手で数えるほど。

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