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連載企画

縄文遊々学-岡田 康博-

第46回 縄文は古くて新しい 2011年3月30日

3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震は、東日本の太平洋岸を中心に未曾有の被害をもたらしました。被害者の皆様へ心より御見舞い申し上げます。

かつて、仕事やフィールドワークで訪れたことのある海沿いの美しい街は、巨大津波によってその面影を見ることができないほど大きく姿を変えてしまい、被災地の映像を見るたびに大きな衝撃を受けました。一緒に遺跡の保存や活用について熱心に取り組んでいた仲間たちも飲み込んでしまいました。貴重な資料も記録も行方が判らなくなってしまいました。現実とは思えないほどの光景の中に、見覚えのある建物や地形を見つけると、否応なしにそれが現実であることを思い知らされてしまいます。

遺跡は、土地に刻まれた歴史そのものです。その中には、人類の幸福を感じられる喜ばしいものもあれば、決して忘れてはならない悲惨な出来事もあります。さまざまなものが累積しています。歴史は文字だけで語り継がれるものではありませんし、後世の研究者が解き明かすものでもありません。その日、その時、まさにその一瞬が刻まれていることを忘れてはならないと思います。

これから復旧、復興が本格的に行われると思います。阪神淡路大震災では、復興に伴って行われた発掘調査に全国から支援が行われました。発掘調査によって明らかになる歴史は、再びその土地に生きることの意味を問いかけ、自分が暮らす土地との関わりを知り、そして生きる勇気と活力を与えたといわれています。

遺跡は過去の歴史ですが、そこから得られるものは未来に向けて役に立つが少なくありません。環境問題、食の安全、福祉、そして災害等、現代社会が抱えるさまざまな問題を乗り越えるための英知が埋まっていると思います。絶望や苦難をどのようにして先人が克服したのか、それを具体的に知ることができるものと思います。過去を知り、今を見つめ、明日を考える、遺跡はそのような意味をもっているのではないでしょうか。

今回の震災に際して、人間の想定を越えたとてつもない大きな力があることを改めて見せつけられ、正直、人間の無力さも感じてしまいますが、人々が力を会わせこの苦難を乗り越え、復興に向けて立ち上がろうとする姿は大きな勇気を与えてくれました。このことも忘れないようにしたいと思います。

2年間にわたり「縄文遊々学」を連載し、縄文遺跡や縄文文化について、わかりやすく伝えることを心掛けてきました。第1部はこれで終わりとしますが、4月からは第2部として、新たに『青森県の縄文遺跡群-世界遺産登録を目指して-』において連載を開始するつもりです。

URLはhttp://www.pref.aomori.lg.jp/bunka/culture/aomori_jomon.htmlです。

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プロフィール

岡田 康博

1957年弘前市生まれ
青森県教育庁文化財保護課長  
少年時代から、考古学者の叔父や歴史を教えていた教員の父親の影響を強く受け、考古学ファンとなる。

1981年弘前大学卒業後、青森県教育庁埋蔵文化財調査センターに入る。県内の遺跡調査の後、1992年から三内丸山遺跡の発掘調査責任者となり、 1995年1月新設された県教育庁文化課(現文化財保護課)三内丸山遺跡対策室に異動、特別史跡三内丸山遺跡の調査、研究、整備、活用を手がける。

2002年4月より、文化庁記念物課文化財調査官となり、2006年4月、県教育庁文化財保護課三内丸山遺跡対策室長(現三内丸山遺跡保存活用推進室)として県に復帰、2009年4月より現職。

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