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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第34回 まほろばに再び花が咲く日 2011年3月23日

東北関東大震災で被災された皆様、心からお見舞いを申し上げます。

家族や家を喪われて、この先はどうなってしまうのだろうかと不安にさいなまれる夜をすごしておられる方々も多くあることと察しています。

スケッチブックより 妖精のすがた

被災されて、避難所におられる子ども連れのお父さんお母さんたちは、子どもが泣いて自分も涙がでたり、無邪気な様子を見て、やっぱり涙がでたり、その無邪気さでさえ喪われてしまうのではないかと心配して、また涙がでることもあるのではないかと思います。

比べものにはならないような体験ですが、私も家族の一人を喪ったときに、暗くて長い長いトンネルに入ってしまって、この暗闇から脱することなど考えられないと感じていたことがありました。

まだ小さかった子どもたちが輝くばかりだった天真爛漫さを喪って、苦しむことになりはしないかと怖くなる毎日がありました。

そんなとき、ある人が言いました。

「お母さん、子どもの心は本来健やかなものです。やりなおせますよ。何度でもやりなおせばいいんです。」

また、ある本にはこんな言葉がありました。

「明けない夜はない」

長いとんねるの先、夜明けは、いきなりは来ませんでしたが、

いくつかの音楽といくつかの言葉、

なんにんかの友人ともう一度笑うようになった子ども、

鳥の鳴く声、花や果物の香りなどが

暗闇に少しずつ黎明が訪れるように、再び彩を与えてくれ始め

やがて陽の光も感じられるようになりました

枯れ野原のように荒れ放題だった古家の庭にも、

やがてひとつ二つと花が咲いて

今では毎春、様々な樹木や草木が再び、こぼれるばかりに花を咲かせるようになりました

長い歴史の中で、いくつもの集落が栄えたであろう北のまほろばの土地

その土地は、今は無残に姿を変え、そのおおらかな夢は途絶えてしまったかに見えますが、太古の村があった谷には岸辺には、その度に打ちのめされた小さな草花たちが、何千回、何万回も、再び芽を結び、陽のさす方に頭をもたげて、立ち上がってきたことと思うのです

どうぞ今は希望を捨てずにいてください

どんなぬかるみでもいいので 希望をひとつ拾ってください

拾ったら その泥汚れを指先でそっとふき取って、失くさないようにポケットにしまってください

暗い夜がきて、眠れないときには、明かりがなくても、それをポケットからとり出すと、それは小さな灯の光で少しだけ心を照らしてくれると思います

誰も知らない暗闇で、涙を流してそれを眺めるのもいいものです

希望をひとつ持っていることさえできれば、あの花の咲く故郷の、北のまほろばの庭に、もう一度必ず たどりつけると思います

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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