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縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第38回 「イメージ力」道場としての遺跡活用–縄文世界遺産アピール考その①– 2011年8月15日

復元イメージを絵にする作業はジグソーパズルをするようなものです。頂く資料をつないだり重ねたりしながら空間を構成して行きますが、ポツポツと真っ白なピースが現れてきます。資料から見えてこない、イメージの空白とでも言いましょうか。

最近は自分の脳内にもイメージの空白地帯が・・・!

「復元」が、アタマのなかでイメージされている間には全く気に留める必要が無かった部分。それが絵にしていく過程ではじめて、「そこまで考えてなかった!」ことが露見してきます。「そこ」にも姿カタチと色を与えなければ、文字通り「真っ白な」部分が散在する、いかにも不完全な復元イメージになりますが、それでいい場合もあります。

その「イメージの空白地帯」に姿や彩を与える作業は、あえて残されている という考えかたはどうでしょう?

縄文の遺跡を世界遺産にとアピールするときに、地下に埋まった遺物や遺構を含めて、「不可視」であることが強みなのか弱点なのか という議論を耳にします。
歴史が刻まれた実物そのものであるピラミッドや万里の長城と比べて、遺物の多くが地下にあり、地上には「復元」された遺跡公園があるという縄文遺跡のかたち。

そのかたちを大きな可能性としてアピールする考え方です。
言わば「レプリカ」からできている遺跡公園であるからこそ、多様に自由に、訪れる人が古代の追体験を実際に経験する機会をもつことができます。

例えば、三内丸山遺跡は、広大な縄文村の風景の全体を思い描くことができる遺跡です。発掘によって得られた情報をフルに生かした復元家屋と、技術の粋をこらして保存されている遺構や遺物の展示を、実際に出土したスケールで見ることができる稀有な恵まれた遺跡ともいえます。

そこには多くのイメージの空白地帯も存在しています。残された空白地帯は、「そこまで考えていなかった」から残ったわけではありません。
岡田先生の言葉です。「まだまだある未発掘地帯や未処理の復元は、未来の考古学と人間の探究心のためにおいてある。」のだそうです。

復元されていない場所、時間、人々。まだまだ眠っている未発掘の遺物。三内丸山遺跡は、不可視な古代の記憶の上に立って、現代の私たちが等身大で動き回りながら古代人も感じたであろう一瞬を追体験できるテーマパークです。

6本柱の高楼から縄文の村人も眺めたであろう悠久の八甲田連峰を望み、縄文海進の海へと続いていた10メートル幅の道路を歩き、丘に登って縄文村の祭りの光景を想像してみることができる幸せ。

このテーマパークでは、本物のピラミッドではなかなかできない様々なことを、イベントやワークショップとして復元された大型竪穴住居の空間で、祭りの丘で、現代の私たちが今、体験することができます。

春夏秋冬、月が出る前の暗闇で、日差しの中で、降り積もる雪の中でも、土器を作る土の感触、石笛の音色、イノシシ鍋の味を堪能し、郷土の血を沸かせる津軽三味線に合わせて熱狂の踊りを踊ることすら ここでは可能です。 

実際、古代でも現代でも、人が体験した感触や思いは決して遺物として残りません。ジグソーパズルで言うなら 現代の考古学で色、形を与えられない白いピースがまだまだいくらもある縄文遺跡では、現代に生きる一人ひとりの人間がイメージ力を働かせ、様々な情報や体験と繋ぎ合わせて、自分のピースを作ってパズルに参加することができます。

縄文の遺跡は、現代からずっと後世の子孫にまで、古代のイメージに姿と彩を与える試み、持続可能なイメージ力道場としての可能性も持っていると思うのです。

今年も開催されます
古代の祭り追体験のお月見縄文祭

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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