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連載企画

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第5回 土器や土偶はまるでレコードのようだ〜縄文トークセッションより 2011年9月8日

NPO法人jomonismでは過去に2回、縄文をテーマにしたトークセッションを行なってきた。第一回目は、2009年6月20日、銀座にある“ウッドストック流宿(!?)”「吉水」で小笠原HOPEネットワーク代表の南瑠衣(るい)さんと、吉水の女将で70年代にアメリカ西海岸のナチュラルライフを経験した中川誼美さん、そしてjomonismの代表を交えて、「縄文×環境」をテーマに開催した。

なかでも印象に残ったのは、小笠原出身の南瑠衣さんの海賊話。なんでも瑠衣さんは、かつて小笠原に辿り着いた欧米系の海賊の6代目にあたるという。現在の小笠原諸島の人口約1500人のうち、欧米系は1割弱を占めるというのだ。島が、決して閉ざされた土地ではなく、外との接点を持っていたかがわかるエピソードだ。

三内丸山遺跡からも、糸魚川のヒスイや北海道の黒曜石が出土している。海流にのって、多くの人が移動していた証だろう。よその土地で作られたものを使う文化が、すでに縄文時代から始まっていたということでもある。舶来品を楽しむ感覚の根っこを見る思いがする。

2009年12月6日に、開催した縄文MIX@青山theater。

縄文研究のさかんなエリア、八ヶ岳山麓からお越しいただいた田中基さんと、ケルト研究の第一人者、鶴岡真弓さん、映像作家のソエジマヤスフミさんを招いて、第二回目の縄文トークセッションは行なわれた。

「世界は大陸と半島と島でできています。われわれは島の住人ですが、日本列島では驚くべきことに、世界でいちばん古いセラミックのフィギュアとポタリー、つまり土器と土偶が発生したのです」そう話すのは、多摩美術大学美術学部芸術学科教授の鶴岡真弓さん。

世界最古と言われる日本の土器や土偶。人の定住化と同時に粘土を捏ねて、火で焼き固められたそれらは、地域や年代によってさまざまな形、紋様のものがあり、独特な造形に驚かされる。

田中基さんは土器に描かれた図像の神話的意味を長年研究されてきた方だ。八ヶ岳南麓を中心に、東京の多摩地区、杉並地区まで広がる土器文化圏が、田中さんの研究のモチーフ。近年、その研究成果を『縄文のメデゥーサ』という書籍にまとめられた。

田中さんによると、八ヶ岳南麓エリアで土器に神話的表現が出現したのは、縄文時代中期のことだと言う。魚やカエルが女性の身体と融合した半人半獣のような表現もあり、非常に神話的意味を帯びていると話す。

水生生物である魚、両生類のカエル、は虫類の亀、ほ乳類の猪。スライドで映し出される土器には、生物の進化の過程を感じさせるものが多かった。加えて、性交と出産のシーンが同時に表現された土器、天地の想像を表したような紋様なども多い。田中さんは、それらの土器の図像はある一定のサイクルで決まっていたと言う。
「個人的に自由に図像表現がされていたわけではなく、約束事のように神話があって、八ヶ岳から多摩、杉並に至るエリアで伝達されており、それをやぶったような図版はありません」(田中さん)

「今あるものが反転して裏返る。ウロボロス(尾をくわえたヘビ)の絵、ケルトの渦巻き紋様。渦巻きとは球心性と遠心生を同時にビジョンすること」鶴岡真弓さんは、ケルトに伝わる紋様についてこう言う。「生きるとはすでに死を含んで生まれてくる。寝ることは死ぬこと、起きることは再生。われわれは80年後に死ぬのでなく、死と生のサイクルを繰り返す。紋様に表現されているのはこの世界(天文)の秩序」なのだと。

さらに、鶴岡さんは「マイケルジャクソンがスターになったのは、ケルト的な合意があった」とも言う。死者がよみがえり、そのパワーを聖者が得ると言われるハロウィンをモチーフに取り入れた「スリラー」でマイケルは、バックにゾンビのダンサーを従えて踊ったことにより、世界的にヒットしたのだと。なんだか納得してしまう話である。

日本列島の最初の文化は紋様で始まった。ケルト同様、渦巻き模様が描かれた縄文土器や土偶。生命の神秘を表したような図像を見ると、太古の人々は現代人とは違うものを見て、感じる感性を持っていたのではないかと思うが、それらの感性が今、すべて失われたとは思わない。

最後に登場したパネラーのソエジマヤスフミさんは3DCを駆使する映像作家。縄文の紋様をヒントにキャラクターのデザインも行なっている。土器や土偶の紋様はクリエイティブの世界においては、いつでも再生可能なのだ。

そう考えると、土器や土偶はまるでレコードのようだ。同時代に同一の神話を描いたのは、それがメディアの役割を担っていたからではないか。そして、火で焼き固めることによって恐るべき耐久性を持ち、1万年後の世界に、図像の意味を問いかけるのである。
太古のレコードからどのメッセージを取り出して活かすかは、あなたの想像次第。さあ、博物館へ急ごう。

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プロフィール

jomonism935のDiscover Jomon

フリー編集者・ライター
NPO法人jomonism会員

1972年北国生まれ。東京造形大学造形学部在学中よりインディーズ雑誌Scum発行。

映画のコピーライター、育児雑誌編集、サブカルチャー系書籍編集を経験したのち、フリーランスとして独立。オルタナティブな視線をモットーに縄文からサブカルチャー、オーガニックや子育てものなど興味の向くまま仕事中。

NPO法人jomonismでは「黒曜石でつくるアクセサリーワークショップ」などを展開。女性のための縄文をいろいろ企画中。

著書に『オーガニックライフ』『ラブ・キャンプ』(ともにマーブルトロン発行/中央公論新社発売)がある。

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