ホーム > 連載企画 > 第6回 ビバ!世界遺産

このページの本文

連載企画

あそこのおかあさん縄文人だから -山田スイッチ-

第6回 ビバ!世界遺産 2008年12月10日

世界遺産を訪れたことが、二度ほどあります。山田スイッチです。

一つはメキシコのマヤ文明の遺跡「チチェン・イツァー」のピラミッドと、もう一つはブラジルにある大瀑布のイグアスの滝です。

どちらも、到着するまではさして興味もなかったのですが。(何せ、マヤ遺跡を観に行ったのは新婚旅行のついででしたから)……それなのに。世界遺産というものは、身震いするほどすごいものだったのです!

マヤの遺跡では草原の緑と遺跡の白さに美しさを感じ、イグアスの滝では「悪魔ののど笛」と呼ばれる、目の前の空間全体が滝となって落ちている大瀑布に、畏れを感じるほど魅了されてしまったのでした。もう、何が起こったのかわけがわからないくらいでした。

何故なら、私はいつも何の気なしに、「アメリカのディズニーワールドに寄って、メキシコでイルカと泳いで、なんかこの遺跡にも寄ってみようよ!」とか。「サンパウロとリオデジャネイロでサンマを売りたいから、ついでにイグアスの滝も観られるツアーに参加しようよ!滝の近くで、味噌汁も配っちゃえばそれでいいじゃん!」なんて軽い気持ちで夫を連れて、世界遺産まで足を運ぶわけですから。

しかし、ツアーガイドという存在はすごいものですよ。何せ、何もわからぬ新婚旅行のカップルを、遺跡まで案内してマヤ文明が何かを伝えるわけですから。

ホテルのロビーまで迎えに来てくれたガイドさんに、「これから車で四時間くらい走ります!」と宣言され、よその新婚さん2組と一緒にボロボロのワゴンに乗り、何故か真っ直ぐに「日照りの時にたくさんの生け贄や財宝が投げ込まれた」という、聖なる泉「セノテ」へと連れて行かれました。

生け贄の投げ込まれた、静かなダムのようなセノテは。緑色で、石灰岩質の白い岩に囲まれた大きな泉でした。怖さと神聖さが一緒になった場所。

聖なる泉を覗き込んだ後、目的のチチェン・イツァーへ。古代人が天体観測に使ったというマヤ人の天文台「カラコル」を眺めながら、その遺跡のデザイン性に、宮崎駿監督のアニメ「天空の城ラピュタ」の一風景を思い起こしてしまいました。マヤ遺跡の風景は、宮崎アニメの牧歌的でありながら、人の気配のない一つの未来のような静かな風景を想起させるのです。

ガイドさんが言います。「チチェン・イツァーのピラミッドの階段の入り口にある、ククルカン(羽毛の生えた蛇)像は、頭の部分しかないのですが。春分の日と、秋分の日にだけ、体が影となって現れるように造られているんです。」

「向こうに見えるのは、サッカーの競技場です。競技場で行われるサッカーは娯楽ではなく、宗教儀式でした。マヤ人は高級な魂にこそ価値があると信じていて、サッカーでは、勝ったチームのキャプテンが生け贄として捧げられていたんです。それが栄光だったんですって。私だったら、そんなサッカー絶対勝ちたくないですけどね。」

何も知らない私の頭の中に、マヤの、今日では不可解なほど謎に満ちた文明が流れ込んできます。北海道と北東北の縄文遺跡群を世界遺産に登録するには、その場所へと連れて行き、古代文明を物語る人。ガイドさんの存在が必要不可欠だなと思います。

オンボロ車で四時間かけてたどり着いた世界遺産は、本当に素晴らしいものでした。

私も自分の軽自動車に誰かを乗せて、青森の縄文遺跡の素晴らしさを。誰かに伝えてみたくなったのでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

プロフィール

山田スイッチ

1976年7月31日生まれ。

しし座のB型。青森県在住コラムニスト。 さまざまな職を経て、コラムニストに。 著書に「しあわせスイッチ」「ブラジルスイッチ」(ぴあ出版刊)、「しあわせ道場」(光文社刊)がある。

趣味は「床を雑巾で拭いて汚れを人に見せて、誉めてもらうこと」。

バックナンバー

本文ここまで