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あそこのおかあさん縄文人だから -山田スイッチ-

第45回 テルマエから縄文まで 2012年3月19日

ヤマザキマリの人気漫画「テルマエ・ロマエ」は
古代ローマの浴場設計技師ルシウス・クイントゥス・モデストゥスが
ローマの公衆浴場で湯船の底に沈んだ拍子に
平たい顔の民族の国……つまり、現代日本の銭湯に
風呂から風呂へとタイムスリップしてしまうというお話です。

ルシウスが暮らしているのは
ハドリアヌス帝(紀元117年~138年)時代の古代ローマ。
その時代、ローマ人は午後になると公衆浴場へ出かけ、温水浴と冷水浴、
マッサージを受けリラックスし、浴場では菓子パンや
ホットソーセージが売られていたそうです。

ルシウスが現代日本の銭湯から学んだ
フルーツ牛乳のアイディアを活かしたローマの公衆浴場活性化を
成し遂げた頃(漫画の中でのお話ですが…)、
中国では魏志倭人伝が書かれ、
邪馬台国では卑弥呼(170年頃~248年頃)が登場していました。

紀元170年頃に登場したという卑弥呼が生まれる174年前は、
紀元前4年。キリスト教の開祖イエス・キリストが誕生しています。
イエス・キリスト(紀元前4年頃 – 紀元28年頃)は
弥生時代の人です。
ということは、西洋における弥生時代の暮らしぶりは、
聖書に描かれているということです。

更に紀元前600年頃、インドではゴータマ・シッタールダが
生まれ、仏教を布教しました。
ブッダの教えは弟子達によって語り継がれ、語り継がれたものが文字になり、
現代まで仏典で伝えられています。
ブッダは縄文時代晩期の人でした。
ということは、ブッダの教えを紐解けば、
その当時(縄文時代晩期)の人達が考えていたことが
わかるかもしれません。

縄文時代は私たちが想像するよりももっと文化的であったという
言葉をよく耳にするのですが、
その「文化的」というものの背景に縄文時代晩期の
ブッダの誕生と仏教思想との同時代性を思えば、
その思想の文化度の高さと複雑さはそれまでの縄文感とは
変わって感じられるかもしれません。

つい最近、映画『世界最古の洞窟壁画3D 忘れられた夢の記憶』
が公開されましたが、
この映画は 32000年前にフランスで描かれた
ショーヴェ洞窟の壁画のことを描いています。
この映画を観たら、きっと旧石器時代の人の見ていたものから
今までとは違う旧石器時代感を抱くに
違いないと思っています。

ヤマザキマリの漫画「テルマエ・ロマエ」は、
古代ローマという、現代日本から最も遠い世界を
漫画という手法によって、一気に身近なものへと引き寄せた
秀作であると思います。

こうして、物語の力により時代が身近になると、
私たちは一気に2000年代の日本から、たくさんの過去・違う場所へと
思いを馳せることができるのです。
そうすると、脳の考える幅は一気に拡がります。

すると、古代ローマから現代日本へ
ルシウスがタイムスリップしてくるのです。

それはまるで、脳の神経細胞ニューロンから
シナプスが伸びていくのを
直に感じるようなできごとなのでした。

参考文献
『テルマエ・ロマエ』Ⅰ~Ⅳ巻 ヤマザキマリ 発行 エンターブレイン
『これだけは知っておきたい(4)古代文明の大常識』監修 関眞興 発行 株式会社ポプラ社
『歴史体験シリーズ ローマ帝国~史上最強帝国の興亡~』マイケル・エドワーズ 株式会社同朋舎出版

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プロフィール

山田スイッチ

1976年7月31日生まれ。

しし座のB型。青森県在住コラムニスト。 さまざまな職を経て、コラムニストに。 著書に「しあわせスイッチ」「ブラジルスイッチ」(ぴあ出版刊)、「しあわせ道場」(光文社刊)がある。

趣味は「床を雑巾で拭いて汚れを人に見せて、誉めてもらうこと」。

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