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連載企画

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第11回 東野翠れんさんと縄文を旅をする 2012年3月29日

3月のはじめ、写真家でモデルの東野翠れんさんと青森の縄文遺跡を旅した。WEBサイト縄文スピリットに載せる記事のためだ。翠れんさんは、日本人の父とイスラエル人の母のもと、東京で生まれ、日本で暮らしているが、幼少期にイスラエルで暮らしたことがある。執筆活動も行う彼女は、昨年、自身のルーツについて思いを寄せた自著『イスラエルに揺れる』を出版した。翠れんさんなら縄文という日本列島のルーツをどう感じ、どう撮るのだろう? お願いすると快く引き受けてくれたのだった。
写真:東野翠れん

是川縄文館で侘び寂びの原点をみる

例年にない大雪で、雪の少ない太平洋側の八戸にも冬らしい光景が広がっていた。暖房のきいた車内からホームに降り立つと、きりっとした空気が肺の中にしみ込んで気持ちよい。
最初の目的地、是川縄文館へ。ここは昨年オープンしたばかりの施設で、国宝の合掌土偶が陳列されている。縄文時代にこの辺はうるし工芸がさかんだったそうで、当時の赤色を鮮やかに残した木製品を見ることができた。今から3千年ほども前のものなのに、それらはまるでタイムカプセルのように、当時の人々の様子をリアルに浮かび上がらせた。

画像:土器

リアルといえば、3つ重なって発見されたという入れ子式の土器を見せてもらった。明らかに重なるように作られたその土器は、デュラレックスのスタッキンググラスのように収納しやすそうで、もっと古層の地層から発見される厚みがあって装飾性が高い土器とは全く違う印象に見えた。最後に、そのスタッキングな土器を特別に雪の上で撮らせてもらえることになった。
「草が見えている雪の上に置いたら、土器がとても馴染んで見えました。土の上で使うのであの形なのでしょうね」と翠れんさん。
雪の上に置かれた土器はとても凛としていて、侘び寂びすら感じられたのだった。

雪のなかの三内丸山遺跡

新青森駅からタクシーに乗り、両脇に除雪された雪のために道幅が狭くなった道路を、新鮮な気持ちで眺めながらしばらく走る。三内丸山遺跡は深い雪に覆われていた。
「雪でなんにも見えませんね」
「当時も冬はこんな感じだったんでしょうか」
そんな会話をしながら、復元住居や六本の巨大な栗の木を組んで作られた六本柱を見て回った。
雪で看板など現代的なものが遮られた遺跡内は、夕刻の赤みを帯びた光に照らされて、牧歌的な雰囲気を漂わせていた。
大雪の中でも六本柱は堂々としていた。
「現代で言ったら、なんだろうと想像ばかりふくらんでしまいました。東京タワーやスカイツリーに相当するものだったかもしれませんよね。それができることで喜ぶひとがいたり、時代の進化の象徴のように思われたりと、いろんな思いがありそうですが、高いものをたてるという感覚には純粋なよろこびもありそうですね」(翠れんさん)

画像:六本柱

夕食は、三内地区にある長いも料理の名店「手風琴」へ。住宅街にあり、迷いながらたどり着いたそこは、店舗というよりちいさな看板のある個人のご自宅。靴をぬいでリビングにあがると、親せきの家に遊びにきたような気持ちになった。しかし、ありついた料理はとても上品で、滋養に富んでいてほんとうにおいしかった。料理もさることながら、店主の細貝さんの人柄が面白く、ずっとおしゃべりをしていたらすっかり長居をしてしまった。

縄文人の里山、白神山地・十二湖へ

翌朝、日本海側の深浦町にある十二湖へ向かった。
ここは白神山地の端っこにあたり、ブナの原生林が見られる。白神山地は縄文の人々にとって狩猟採集の里山で、栗やトチなどさまざまな食料を供給していたと言われている。現代において、縄文の人々の暮らしを感じるとしたら白神山地は絶好の場所なのだ。
冬は閉山しているエリアだが、ガイドさんと同行なら歩くことができる。この日のガイドは原田さん。実は横浜出身の方だが、白神の自然に魅せられて移住された経歴をもつ。

画像:雪原の葉っぱ

森のなかを雪を踏みしめて歩く。ときどき後ろを振り返ると、翠れんさんは何度も立ち止まっては、雪の上の動物の足跡や雪に埋もれた枯れ葉を撮っていた。
黄色みがかった葉は雪上では数少ない色だ。そこに太陽の光が集まり、反射熱で葉っぱのまわりの雪が融けるのだと、原田さんが教えてくれた。木の幹の周りがくぼんでいるのも同じ原理で “根開きの穴”と言うのだそうだ。さらに幹を雨水がつたうことで穴がしだいに大きくなり、隣の木の穴とつながって大きくなっていくのが、雪解けなのだという。
「それで春が近くなっているのがわかるんですね」
「縄文の人々は、そういう自然界の摂理を知り尽くしていたのかも」
真冬の森で、いろんな想像が膨らんでいく。
縄文人の主食だったというトチの実。その木の枝先には新芽が膨らみ、粘り気のある樹液で守られていた。
「木がちょっと粘り気を出して芽を守ったりするように、人間も自然の中で工夫しながら生きていたのかな」(翠れんさん)

画像:ブナの森

大小の沼の脇を通り、ゆるやかな斜面を行くと、ブナの森が広がっていた。グレーの迷彩柄のような幹が美しいブナは、水分を多く含むため、樹齢が高い木ほど幹に苔がつく。ブナが生えている森は、水が豊かな土地ということでもある。
最後に、平成の水100選にも選ばれた伏流水を飲ませてもらった。やわらかくてまるみのあるおいしい水だった。森のめぐみのありがたさを心底感じた。
「住むならここですね」
「おいしい水もありますしね」
そう会話しながらはたと気づいた。
きっと縄文人も同じような会話をしていたに違いない…。
是川、三内丸山、十二湖という今回のコース、縄文シンクロ率120%の旅として、自信をもっておすすめしたい。

翠れんさんの縄文な写真とさらに詳しい旅の様子は、WEBサイト縄文スピリットで!

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プロフィール

jomonism935のDiscover Jomon

フリー編集者・ライター
NPO法人jomonism会員

1972年北国生まれ。東京造形大学造形学部在学中よりインディーズ雑誌Scum発行。

映画のコピーライター、育児雑誌編集、サブカルチャー系書籍編集を経験したのち、フリーランスとして独立。オルタナティブな視線をモットーに縄文からサブカルチャー、オーガニックや子育てものなど興味の向くまま仕事中。

NPO法人jomonismでは「黒曜石でつくるアクセサリーワークショップ」などを展開。女性のための縄文をいろいろ企画中。

著書に『オーガニックライフ』『ラブ・キャンプ』(ともにマーブルトロン発行/中央公論新社発売)がある。

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