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連載企画

縄文の風を感じてみませんか?-土岐 司-

第6回 こころを開くアリンコ・・・ 2008年12月1日

社会生活に疲れた人の心を解いてくれる白神の森は、若い青少年たちの心をも解き放つ力を秘めている。私は地元の子どもたちに自然体験のプログラムを提供している。彼らは街にいる時には、虫が怖い、カエルは気持ちが悪いなどと毛嫌いすることが多いと言う。この頃は昆虫ブームで虫取りに興じる姿があるが、その多くは男児に限られる傾向が見られる。

女児や女生徒には、やはり気持ちが悪い存在のようだ。泥んこの道を歩いて靴が汚れたりすることに抵抗があることと同じようなものなのだろう。自然の中でいろいろなレクチャーをして、触れたり、野草を食べられる事などを重ねていくと、いつの間にか泥靴のことも忘れて自然に同化していくのがわかります。道端に見つけたミミズに声をかけたり、「あ!アリンコだ!お前元気そうだね」などと友人を見つけたかのような素振りに笑いこけることも多いのです。

殊に知的発達障がいを持つ生徒たちは、木の香や川のせせらぎの音に敏感です。感じた量だけ感動も大きいのが手に取るように分かります。彼ら彼女らの感性は並ではなく豊か過ぎるほど豊かです。毎日、このような自然の中で過ごすことが可能ならば、もっと心が開かれ伸び伸びとした生き方を身につけることだろう。

自然の持つ底力は、このように何の衒いもなく人を包み込むのだと感じるのは、私一人だけではないだろう。古今和歌集や万葉集は、その自然の豊かさを受け止め、自分の思いと重ねた詠歌が少なくないことからも知ることが出来ます。それほど日本人は豊かな自然の中で感性が磨かれ、日本人の精神文化を形成してきたのでしょう。

若い彼らに、そのような日本人の精神文化を伝えることが出来るならば「自然は最良の教育者」であり、白神山地は自然科学的遺産でもありながら精神科学的遺産とも呼ぶ価値を秘めた山地であると強く思うのです。

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プロフィール

土岐 司

1942年青森県生まれ

高校理科教員を38年勤め、2004年有限会社ヒーリングエコツアーPROガイド エコ・遊を設立。 教員在職中、白神山地を題材とした授業の中で、白神の自然を後世に残すという想いに目覚める。

会社設立より現在に至るまでのシーズン中(5月中旬~11月中旬)に白神を留守にしたのは片手で数えるほど。

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