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縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第50回 踊る精霊の影 ――土偶アーチストが見た京都・青森―― 2012年9月18日

話は遡り2010年イギリスでの土偶展“ENEARTHED”でのこと。

ちょうど私も出品していた当地での関連展Rebirthのオープニングパーティーで 面白い女性に会いました。ウイットがあり野性的、別れた旦那と連れ立って来ているところなども お友達になれそうな・・・・聞けば、踊る土偶アニメを手がけた作家とか、それがサラ=ベールとの最初の出会いでした。

展覧会の主催者セインズベリー視覚芸術センターはその創設から、古代と現代のアートをともに展示することで時の流れにもテーマを問いかけるという、博物館と美術館を区別しない思想を貫いています。

「踊る土偶」は、その「土偶展―人はなぜ人形をつくり続けてきたかー」で最初に出会うアート作品です。見知った縄文の土偶がそっと手や足を動かして ちょっとだけ腰を振ったりする・・・流れる音楽にも不思議な安らぎがあって、作家伝授のウイットが溢れる短編アニメーションでした。

サラが見た京都から
サラが見た京都から

そのサラが、念願の日本にやって来るということで、案内役を頼まれました。何度もの挫折の後、ようやく実現した旅、関空到着翌朝の京都の酷暑もなんのその!初日からテンション全開。歓迎の挨拶もそこそこに腹ペコのサラとその友人ナターシャを錦市場へ連れて行きました。さて、京の台所、見たこともない食材に溢れる市場でまずサラが目を見張ったのは うどん屋さんの前に並んだプラスチックの料理見本。「本物そっくり!! 細部まですごくリアル!」次に入ったのは何故か靴下屋さん。「駅で見た女性が素敵なシースルーソックスを履いていたのよ!」・・・市場の靴下屋さんはバイリンガルの商品説明をしっかりとつけ、日本製靴下の値段が高い訳としてマネのできない縫製技術の説明を仔細にしてくれました。

錦小路を歩くとき私は京の食材にしか目を向けませんでしたが、全てが異文化初体験の彼女たちについてゆくと、賑やかな通りにひっそりと息づいていた日本モダン工芸の技を発見することになったのでした。ロウ見本でも、靴下でも器用に工夫を凝らさずにはいられない日本人気質。縄文人が作り出したあの完璧とも言える空間構成からなる造形も、雄渾なものから繊細な小さな器まで、ひょっとすると同じ気質を語っているのかも知れないななどと思いました。

サラが見た三内丸山
サラが見た三内丸山

そしていよいよ三内丸山遺跡でのお月見縄文祭にサラがやってきました。まずは朝の遺跡の広々としたスケールに感嘆の声。林を育てて周囲の現代的風景から遺跡の景観を守るという方針にもいたく感動の様子。爽やかに風が渡る草むらの向こうに復元住居が見えてくると、「ずっと噂を聞いていてもね、実際に行ってみるとがっかりする遺跡がイギリスにはたくさんあるのよ。ここは本当に期待以上だわ!」とカメラを取り出して小走り。

サラが見た月見の宴
サラが見た月見の宴

もうひとつサラが感嘆の声を上げたのは時遊館にある三丸ミュージアムの土器展示でした。「これは実に素晴らしいライティングよ!」写真撮影自由というのも「Very kind!」

午後のワークショップでは、大型復元住居の空間で件の「踊る土偶」アニメを見ながら サラに制作苦労談などを聞いて後、木切れや葉っぱで「踊る」縄文の精霊を作りました。持ってきてもらったアニメの背景とサウンドトラックだけのDVDを映しながら 参加者が作ったそれぞれの精霊を、サラの土偶と同じ背景で踊らせようという趣向です。

はじめは恐る恐るだった子供たちの「木の精霊」も、宮崎さんが奏でる縄文パーカッションにのせられてか、次第に大胆なダンスを始め、やがて入りきれないくらいたくさんの精霊の影が画面せましと踊りを繰り広げました。

どの人も親身に親切で、お月様までが大らかに見守ってくれた三内丸山お月見縄文祭。「まるで数週間滞在したくらい充実して楽しい経験だったわ!」新青森駅でそう言ってサラたちは新幹線に乗りました。

参考

・2010年英国イーストアングリア大学セインズベリー視覚芸術センターでの土偶展ENEARTHED”  http://www.scva.org.uk/exhibitions/archive/index.php?exhibition=78

・日本からの作家も参加した 同時開催縄文展 ”RE BIRTH”  http://www.tkazu.com/saho/j/UK2010_japanese.htm

http://www.art1821.com/exhibitions.php

安芸 早穂子 HomepageGallery 精霊の縄文トリップ

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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