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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第54回 光る森・光る雲 2013年1月7日

「夜の記憶」 アクリル、木

新年早々、寝正月の収穫といえばNHKで見た2つの番組かもしれません。ひとつは、人工衛星からハイビジョン撮影された夜の地上の街々を見る番組。

大陸と海をはるかに見晴かす宇宙から、いうなれば神の視座で見る地球は はかなく薄青い大気の層をベールのようにまとって無音の闇に浮いていました。

ヨーロッパからユーラシアを横断して日本まで、惑星の広大な夜の闇にポツリポツリと瞬く小さな灯りの群れは、けなげに暖かく そこにも人の営みがあると知らせてくれていました。一方、宇宙からも煌々とまばゆく眼を引く大都市の明るさは、眠るべき平和な夜をはねのけてお構いなしに増殖する人間の欲望そのもののようでした。

そのような地球の姿を眺めるうちに、絶え間なく煌めく大気圏での放電現象が目にとまりました。初めのうちはどうしてあんなに雲が光っているのかと訝しく思いましたが、雷などの自然放電現象は雲と地上の縦方向ばかりでなく、もっぱら雲どうし横方向に発生するものだと説明がありました。

地球上に生命が誕生する過程で電気による化学変化があったという話を聞きますが、あちこちで放電して光る雲の海をまとった地球の姿を見ると、自然界はケミカルでエレクトリックな化学反応に満ちたものでもある、ということがよくわかりました。

「トドカヌネガイ」 アクリル、キャンバス

ケミカルでエレクトリックな自然物といえば 私には人間の脳が浮かぶのですが、人間の脳内でも 思考や記憶があのような光となってシナプスを駆け巡っているのだろうかと考えると なにか壮大なデュアルイメージを想起してしまうのは私だけでしょうか?

「光る森」は森を光らせる夜光キノコとその胞子を四国山地と八丈島の森に探る番組でした。http://www.nhk.or.jp/kochi/hikarumori/
ー神秘の発光を追うーと副題がついたこの番組では、マニヤックさでお馴染みの国立科学博物館の研究者が夜光キノコのメカニズムを探りますが、倒木を土に戻す役割を負うキノコが堅い木にミクロの根を張って酵素を注入し、暗闇で光を発しながら分解を行っているという これまたなかなかナチュラルケミカルなお話でした。

森の命の循環を担うキノコが 黄緑の蛍光色に輝けば輝くほど、その森が健やかに生きている証となる・・・研究者は言いました。今では僅かな森でしか見ることができない訳は、森が弱ってしまったばかりでなく、人間が夜を明るくし、きのこの光に眼を留めるための暗闇をどんどん無くしてしまったがためとも話されました。

宇宙から見た大都会は、放射状に蜘蛛の巣のような道路という光の筋の根を張って、惑星のあちこちに巣食い、ギラついて輝く人工の光の胞子を撒き散らす病原体のようでもありました。

「美しい」とコメンテーターたちが言う大都市の光は、思いのままに増殖しはびこって ひっそりと輝く森の命の灯を見えなくしているのでした。

縄文時代、漆黒の森の暗闇で光るキノコの群生は、広大な夜の地球で瞬いていた小さな光の群れのように懐かしく暖かな気持ちを人々にもたらしたでしょうか。死にゆくものを分解し生まれ出るものを助けて光るナチュラルケミカルライト。その時代、すべての森は健やかに輝く小さな明かりに満ち満ちて、静かに夜の闇を祝福していたのかもしれません。

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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