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世界の"世界遺産"から

第54回 世界遺産の“和食”を召し上がれ。 その2 2013年12月26日

正式に登録が決定いたしましたね。いやあ、めでたい、めでたい。あらためて2013年を振り返ってみれば、もっとも印象深かった仕事のひとつが、歴代総理も密かに通うミシュラン星付き和食店のご主人から「和食の心得」なるものを伺った取材だった。その真髄をひとことでいえば……今年の流行語大賞にも選ばれた「お・も・て・な・し」である。

たとえば、今や世界各国で見かけるオープンキッチンのスタイルは、和食のカウンターから端を発したのだとか。料理を口にしていない時間も、客人を楽しませたいという思いが込められている。さらに目からウロコだったのは、お造りの盛りつけは3種類、5種類など実は奇数が基本だということ。「別れ」に通じる偶数を避けて、ご祝儀を包むのと同じ感覚なのだ。季節の恵みをおいしくいただき、大地に感謝するのは日本に限らず世界共通だが、「走り」と「名残」という前後を設けるのは和食だけ。客人のために心をつくし、入手が難しい食材を揃えましたという、これまたおもてなしの表れなのだそうだ。

そう聞いて思わず赤面したのは、2年前の秋の記憶が甦ったから。かの白州次郎&正子ご夫妻も贔屓にされていた某先生のお宅に伺い、夕餉に出されたのが、ハモとマツタケの鍋。今から思えば、名残と走りを組み合わせたすばらしいおもてなしだったのだが、「いぇ~い、ご馳走バンザ~イ!」と単純に歓び、食欲全開の中高生男子のようにわしわし喰らい。さらにはのんだくれでもある先生と意気投合して日本酒1升、ウイスキー1本を空にした後、お座敷にて高いびきで熟睡した、ダメダメなわたくし。ああ、この場に穴を掘って引きこもりたいほど恥ずかしい。もう既にいい年齢なのだから、少しは進歩したく、感謝の心も持ち合わせたく。

などという反省にひたる間もなく原稿に追われ、具のないうどんをすすりつつ、「なす1本でも、おいしければそれはご馳走」という和食店のご主人の言葉をいいように解釈し、自分を慰めている切ない年の瀬である。おそらく2014年もふつつか者のままですが、なにとぞお見限りなく、よろしくお願いいたしますね。

ひとつひとつの美しい所作に見入った、青森市「寿司一」さんのカウンタ-。 写真:松隈直樹

ひとつひとつの美しい所作に見入った、青森市「寿司一」さんのカウンタ-。
写真:松隈直樹

今年No.1のほやをいただいた鰺ヶ沢の宿。1泊2食で6000円足らず! 写真:松隈直樹

今年No.1のほやをいただいた鰺ヶ沢の宿。1泊2食で6000円足らず!
写真:松隈直樹

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プロフィール

山内 史子

ライター、紀行家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」(小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。2016年6月に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)を上梓。

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