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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第69回 近江国サンショウウオ大明神は語る 2014年6月6日

イラストあ~また子どもが来た
子どもは苦手なのよ わし
うっかり捕まえられて こんなシースルーなガラスと隣り合わせの
水族館の水槽にいる羽目になったもんで
動きもせず こうしてじっと物陰にいてさえ
子どもが寄ってきてやかましく何か言いおるよ

近頃の子どもは 空気は読むけど
水景色に息づく静かな気配は 全く読めない
ま、いいけどね

ばかでかいってか?
137センチだったかな・・・体重2.8キロ、1月に測ったのね
ちょっと暴れて脅かしてやったから 新聞にも出たわさ
・・・けっこうな年月生きてるのよ わし
巨大で不気味!とかぬかす奴らもいるけどね
威厳があるって言ってね
ちょっと自慢に思っているんよ 実は
恐竜の面影あるでしょ
平べったい顔にどんよりとした眼だけど
けっこう記憶力もいいし、それなりに知恵もある
ただ見せないだけね 読めないやつらには
面倒だし

イラストそもそもわしが捕まったのは
隠れる場所がなくなったからね
じっと隠れることが何より好きなのにね 不自由よ
月並みだけど昔はよかった
そもそも琵琶湖の東岸はほとんど葦の原の大湿原だったのよ
泥や浮草や葦の原に護られていたの
それが新しい用水路におっこちると まあいい晒し者よ
湿原に帰りたいけど 近頃見かけなくなくなったし
そういう泥んこでジメジメしたわしらの天国はもうない
人間の役にたたないからだってさ

果てしなく続いていた湖岸の葦の原で
やつらは ついこのあいだの江戸時代くらいまで
鳥を射たり漁をしたり貝を集めたり
それはお世話になっていたくせに
今では虫がいるとか蛇がいるとか泥が臭いとか言って
片っ端から掘ったり埋めたり固めたりして親水公園だとか言っているよ
ま、いいけどね

曾爺さんから聞いた話では 昔の人間どもは
ずいぶんとわしらを怖れたり拝んだりしてきたらしいよ
威厳があるからな
サンショウウオ大明神でとこさね
そっと丸木舟でやってくる湖岸の村人に
御馳走や酒をもらって
いろいろ頼みごともされたらしい

あんときはたまげたな~って 爺さんが言ったもんだ
娘を沈めるから 雨降らせてくれとか言われて
そんなもん沈められてど~すんの?って
いらないから雨降ってくれ~!ってこっちがお願いしたわって
縄文時代はよかったらしい
女は大切だし 人形で許してねって土人形くれてさ
あれは置いておくと虫とか小魚が住むもんで
役に立つのよ ちょっとした魔法の弁当箱ね

・・・人間てだんだん馬鹿になっていくのかなあ・・・
そんなに弱腰だった奴らがね なんだか近頃は
わしらがそこにいるかとも訊かずに
葦の原を片っ端からなぎ倒して
百年もたたないうちに腐っちまう灰色の泥で固めて
仁義もわきまえん おっそろしい異国の魚を水に放して
まあ滅茶苦茶しよるよ

今まで学んできたこと全然伝えとらんから
湖のいいところも怖いところも
仕組みを全然読まないで 力ずく 金ずくね
そうそう なんかしらん新しい神様に仕えているらしい
スベテコノヨハ金シダイ大明神だってか?
ま、いいけどね

静かな水景色に抱かれて生きた記憶も失くした人間どもに
わしらの知恵をつたえてやるのも
面倒だし・・・

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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