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連載企画

小山センセイの縄文徒然草 小山修三

第37回 マクワウリ 2014年8月8日

「マッカを食べなさい」、疲れがこうじると膝に水がたまるという友人が漢方医者にそう言われたそうだ。マクワウリが薬として使われるのかどうか、効果はどうなのかはよく知らないが、体の水取りにウリ類がいいという話は子どものころからよく聞いていた。庶民の知恵と言うべきものなのだろうか。

スーパーにいってさがしてみたがマクワウリはなかった。数年前に飛騨高山の小さな八百屋で箱の隅に転がっているのを見つけ「おー、こんなとこにいたのか」と喜んで買ったことを思い出す。しかし、その曖昧な甘さはもう現代の果物ではないと思った。より「甘く」を追いかけてきたのが近年の日本の果物栽培の道だからだ。私たちはもうマクワウリを食べられないのだろうか。

ところが、ドライブの途中で立ち寄った道の駅でマクワウリを見つけた。箱に並べてあり、1ヶ150円。そうなのかーと思いつき道の駅をさがして奈良の南の十津川あたりまで足をのばした。十津川は山地なのでマクワウリはあまりつくらない。庭で自家用だけで、畑でやるとサルやシカが荒らすのだという。一方、平地の村には量は少ないものの結構おいてあった。

マクワウリは今、いわゆる野菜・果物の商業流通網から外れているが、それとは別の流通ルートである道の駅、観光野菜市、直売スタンドなどにしっかり残っており、同じ現象はアメリカでのファーマーズ・マーケットの意外な盛り上がり方に通じるものである。スーパーは確かに便利だが、コスト優先で、産地(なんと中国製が多いこと)、栽培法や冷凍・冷蔵による時間差、同じサイズと品揃えする画一性など、人間性が希薄である。割高でも、かたちは悪くても、新鮮さやノスタルジアも加わって地産の品を食べたがるのは、私たちの心の問題なのだろう。マクワウリをインターネットでさがしてみると結構たくさんの記事があり、姫路、近江、岐阜などでは地域おこしの元にしようと頑張っていることがわかり、行ってみたい気になる。

ウリ科の植物はキュウリ、スイカ、カボチャ、ヒョウタン、ヘチマ、ユウガオ、ゴーヤ、メロンなど周りにいっぱいある。メロンとマクワウリの交配もある。あまりに種類が多いので、植物学者は現在でもその分類に悩んでいるらしい。また日本では、縄文時代のヒョウタンの出土がはやくから知られていた。食用には不向きだがれっきとした栽培植物なので、縄文農耕を否定したがった日本の考古学者(私も)には頭の痛い問題だった。
ヒョウタンはアフリカ原産とされているにもかかわらず、南アメリカにも早い年代がでるなど、年代的、地域的に混乱を極めて、海流にながされ世界に拡散したという説さえでた。日本もそれならいいのだが、海から遠い内陸の例も出ていて、まだまだ決着はつきそうにない。農耕肯定派の友人は栽培植物を持った狩猟採集民なんているのか、と強硬だったので説得に汗をかいたことを思い出す。
ヒョウタンとされていたものはその後、メロンの仲間、ユウガオなどと鑑定者の意見が揺らいでいる。しかし、長く不安定だったマメ類の固定化ができたように、ウリ類の解明もそう遠くないだろうと思っている。

マクワウリ

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プロフィール

小山センセイの縄文徒然草

1939年香川県生まれ。元吹田市立博物館館長、国立民族学博物館名誉教授。
Ph.D(カリフォルニア大学)。専攻は、考古学、文化人類学。

狩猟採集社会における人口動態と自然環境への適応のかたちに興味を持ち、これまでに縄文時代の人口シミュレーションやオーストラリア・アボリジニ社会の研
究に従事。この民族学研究の成果をつかい、縄文時代の社会を構築する試みをおこなっている。

主な著書に、『狩人の大地-オーストラリア・アボリジニの世界-』(雄山閣出版)、『縄文学への道』(NHKブックス)、『縄文探検』(中公 文庫)、『森と生きる-対立と共存のかたち』(山川出版社)、『世界の食文化7 オーストラリア・ニュージーランド』(編著・農文協)などがある。

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