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連載企画

世界の"世界遺産"から

第12回 満漢全席的世界遺産、バチカン市国 2010年2月19日

ああ、もう限界……。大きなため息をつき、ようやく見つけたベンチに腰掛けた。バチカン市国の博物館に足を踏み入れ、1時間足らず。限界を感じたのは運動不足の身体ではなく、容量の少ない頭のなかだった。

壁も天井も濃厚に主張。
写真:松隈直樹

ラファエロ、ミケランジェロなど名だたる芸術家の作品をはじめ、見応えのある絵画や彫刻などが、これでもかとばかりに続くのだ。金箔をふりかけたフォアグラと大トロを、3日3晩食べ続けたような感じ(そんな経験はないが)。天井にも装飾がびっしりなので、首も痛い。

システィーナ礼拝堂、サンピエトロ大聖堂と、その後も景色は迫力を増すばかり。徹底して荘厳かつ豪華。はたまた、徹底して繊細かつ緻密。信仰心なしでも圧倒されるのだから、カソリック教徒の感慨は計り知れない。権力、財力、知力。ローマ・カソリック教会の凄さに、文字通り力負け。うんまいワインとピザにありついてからも、しばらく呆然とした状態が続いた。その存在の裏側は複雑だが、歴史や芸術への関心が薄い一見さんでも極めてわかりやすい、という点において、これまで接した世界遺産のなかで、バチカンが群を抜いているような気がする。

サンピエトロ大聖堂。
写真:松隈直樹

ところ変わり、かつてローマ・カソリック教会と袂を分かったイギリス。VIPも利用する高級ホテルのマネージャーから、「日本って、中国のどこにあるの?」と真顔で聞かれ、一瞬、返答につまった経験がある。誤解や勘違いはまだまだ少なくないのだと、苦笑してしまった。ましてや、縄文時代のこととなれば、海外から訪れる人の知識はまったくないといっても過言ではない。それこそが驚きや感動につながるはずだが、一方で想像や理解が難しいのも事実。派手な演出は必要ないとしても、より多くの方々に縄文の世界を鮮やかにイメージしてもらうためには、幾重にも工夫をこらさなければならないだろう。理論のみならず、体感も重要なのかもしれない。

蛇足ながら、よく言われる“国際化”を重視するなら、英語よりも日本史や宗教を含めた世界史の時間を増やした方がいいと、学生時代に遊び呆けていたは我が身を省みつつ、40歳を過ぎた今、つくづく思う。相手を、そして自分を理解する上で、極めて重要なデータなのだと実感している。はったり英語でなんとか旅しているものの、歴史に関しては遅ればせながら勉強を重ねても、終わりが見えない。縄文時代に関しても、また然り。しかも、下手な小説よりずっとずっと面白い。30年前にわかっていたら、もちっとマシな大人に育っていたかもしれぬと、後悔しきりのオバチャンである。

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プロフィール

山内 史子

ライター、紀行家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」(小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。2016年6月に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)を上梓。

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