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連載企画

世界の"世界遺産"から

第65回 世界遺産登録を願い遮光器土偶が各地を視察!? 2014年12月16日

7件の登録資産と、暫定リスト記載を含めた5件の候補。今年もあちらこちらへと放浪しながら、世界遺産コレクションの充実に努めてきたが、その旅のすべてにつきあってくれた人がいる。いや、人ではないですね。亀ヶ岡遺跡から見つかり、重要文化財に指定された遮光器土偶である。

レプリカとはいえ、土から作られ素焼きを施した、正真正銘の土偶。「シャコちゃん」と名付けられた身長10センチほどの彼女(?)は、3年ほど前からわたくしのスーツケースやバッグに忍び込み、国内外、時空を越えた旅を楽しんでいる。南アフリカの喜望峰、フランスのヴェルサイユ宮殿、バリ島の棚田、インドのタージ・マハル、沖縄の首里城、長崎の教会群などなど。世界遺産を訪ねる様子をFacebookでご紹介するうち、すっかり注目の的に。ときには飲み会に参加し、頭をなでなでされるほど人気者なのだ。

今年の春、イスラエルに赴いた際も、世界遺産登録のエルサレム旧市街をはじめ、随所で記念写真を撮影したのだが、旅前からわたくしが密かに楽しみにしていたのは、このコラムでもご紹介した死海。死海に浮かぶシャコちゃんを撮りたい。カメラマン氏に目論みを話し、期待に胸ふくらませて出かけたのだ。腹の脂も背脂もたっぷりの我が身が浮かぶのだから、小さなシャコちゃんだってきっとぷかぷか……。

のはずだったのに、水面に置いた瞬間、姿が消えた。しかも、水底を沖へと流されていくではないか。あわてて救出を試み、なにかの間違いかもしれないと3度繰り返したが結果は変わらず。冷静に考えてみたら、そもそも土偶は水に沈んであたりまえ? 「いつ気づくかと思っていたのだけど……」と苦笑するカメラマン氏を悔し紛れににらんだものの、塩水にまみれ、きらきら日差しにきらめくシャコちゃんはなんか楽しそうに見えたので、まあ、いいか。

などと思っていたら、まずは全身に塩がふき出た。そして、さらなる悲劇が……。縄文キャラクター・Jタローのストラップを肩から斜めがけにしていたのに、ホテルへと戻る30分足らずのうちに、そのJタローがぽとりと落ちた。金具がいかれたのだ。ごめんね、シャコちゃん。死海の塩分、おそるべし、である。

シャワーを浴びてきれいになったシャコちゃんは、引き続きの旅生活。来年はどこに連れていこうかな。世界遺産巡りは、まだまだ続く。

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プロフィール

山内 史子

ライター、紀行家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」(小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。2016年6月に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)を上梓。

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