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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第82回 変身のフラクタル 2015年9月2日
下:オーストラリア先住民の世界観を表わす絵

上:「縄文の子どもたち」朝日新聞出版より
下:オーストラリア先住民の世界観を表わす絵

焼き物は変身する
素材も色も匂いも重さも手触りもすべてが生まれ変わる
土と水とが炎に焼かれることによって

土と水を捏ねて炎に投じれば固い器ができ、その器は液体を溜め熱く沸き立たせることができる、と人間が気付いたのは自分らをとりかこむ世界の成り立ちを知るよりも前だっただろうか、後だったろうか。

火山の噴火を目撃した古代人たちは、火と土が同じ山から生まれ出た兄弟であると知っていたでしょう。そもそも土は火から生まれたのでした。
火山は雨を得て伏流水の泉を生み、広大な裾野に無数の湖沼を出現させもしました。

火を噴く山の裾野を潤す水源地帯を多くの縄文の人々は住処としました。火山の噴煙を見ながら、その中に眠る火の神の胎動に目と耳を研ぎ澄まし、怖れたり敬ったりしながらもそれが生み出す豊かな世界で、与えられる多くのものを受け取り、それに負けない多くの儀式を執り行っては還すべきものを返して、彼らは暮らしていたことでしょう。
火の山と水流系が織りなす入り組んだ世界を、太陽と風と相談しながら旅するハンターたちは、火の山を中心に形づくられ、破壊され、また造られる世界を、私たちよりもずっと深く理解していたかもしれません。
そこで彼らが見ていたものは 我々のカレンダーにはない大きな時の流れの中でしか見渡すことができない、破壊と再生に満ちた惑星の変身の営みだったと思います

世界は何からできていて どのように姿を変えてゆくのか。視界にビル街があると見えない広大な惑星の営みが 見え、感じられていた時代の人々は 私たちよりずっとそのことを考え、語り伝え、知っていたと思います

地球を宇宙から見ると 大気圏を覆う雲の海には無数の放電現象の光が見えます。熱や雷で自然界に化学反応が起こり、存在がその質を変化させる。
惑星自身も、太陽という熱の塊から生まれ、その熱をいまだに内包しながら、放電現象に輝く大気をまとった化学反応の浮遊体だということを人工衛星という眼を持って初めて人間は発見したと現代人は思っていますが、それは本当にそうなのでしょうか?ほんの数世紀の昔、科学技術という理論的な眼が誕生してから、世界のすべてをその眼でしか見なくなり、あらゆる存在を理詰めで理解しようとしたときに一度見失ったもの、古代人の壮大な宇宙観を、私たちは21世紀になってやっと再び垣間見るに至っただけではないかと思います。

自分が起こした小さな火が大きく燃える炎となって、さっきまで濡れていた土の塊を焼き、 生まれた時とは全く違うすぐれた器に変身させるありさまは、古代人たちにとって、火山が火と溶岩を吹き出し、森を焼き尽くしながら新しい土地を創りあげる数千年の惑星の営みと、とても近いところにあったと思うのです

水と土を捏ねて火に投じると生まれ変わって現れる土器には だから変身の物語が隠されているし、それを作ること自体が、死と再生を繰り返す惑星の壮大な変身物語とフラクタルであると 古代人は認識していたのではないかと、土器を見ていると思います。

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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