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連載企画

世界の"世界遺産"から

第83回 世界遺産の真ん中で旨しビールを飲む 2016年8月23日

前回、イギリスのストーンヘンジをご紹介したが、そこから30kmほど離れた場所にあるエーヴベリーの環状列石もまた、皆さまのお心に留め置いていただきたい世界遺産である。巨石が並べられたのは紀元前2600年ごろと、ストーンヘンジよりも少々前のこと。直径約330mの外側と、その内側の2つの輪を中心に構成されている。

ロープで囲まれたストーンヘンジとは異なり、こちらはさわり放題、無料で見放題。観光客はもちろん、あきらかにご近所と思しき犬の散歩を楽しむ人も石の間をぬって歩いている。しかも、ど真ん中を車が通り、周辺には建物が並び……。要は巨大な遺跡のなかに小さな村があり、現代の暮らしと太古が一体化しているのだ。数千年の時を経て石が意味をなさなくなったとき、自然と集落が形成されたらしい。その景色が、なんともたまらず愉快でならない。

家の壁や屋根にぴったりじゃ! とばかりに、周辺の人が石をちゃっかり削り取ったケースも少なからずあるという(ストーンヘンジも同様)。ダウジングの針金が大きく振れたというストーンヘンジの話を思い出し、もしかしたら……と期待しつつエーヴベリーでは何度も石にふれてみたのだが、パワーとか波動とかミラクルとか、そういう類のものはな~んにも感じず。石の力が劣化したのか。あるいは、一部の人たちが聖地として崇める状況を考えれば、世俗まみれのわたくしが悪いのか。遺跡の中央、村で唯一のパブでうんまいビールを飲みながら、己のふがいなさを嘆いたのである。

このエーヴベリーの遺跡の近くには、人工の丘としては欧州で最大&最古の、シルベリーヒルと呼ばれる謎に満ちた場所もある。高さ約40m。ピラミッドを彷彿とさせる、美しい円錐台の姿から当初は墳墓だと思われていたものの、発掘の際、それと思しきものを含めてなにひとつ発見されず。秘密のヴェールに覆われたままの存在なのだ。同時代に存在するエーヴベリーの遺跡と何らかの関連があるはずだが、それにしてもなぜ、どうやって……。

エーヴベリーの遺跡やシルベリーヒルは、日本のガイドブックでの扱いは極めて小さいものの、遺跡好きなら赴く価値あり! で、どなたか、石にふれてもし不思議を感じたら、ぜひともご連絡を!!太古からのメッセージを受信するべく、わたくしも引き続き精進いたします。

エーヴベリーの遺跡。奥の白い壁の建物がパブ。 写真:松隈直樹

エーヴベリーの遺跡。奥の白い壁の建物がパブ。
写真:松隈直樹

幾何学的に美しい姿のシルベリーヒル。 写真:松隈直樹

幾何学的に美しい姿のシルベリーヒル。
写真:松隈直樹

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プロフィール

山内 史子

ライター、紀行家。1966年生まれ、青森市出身。

日本大学芸術学部を卒業。

英国ペンギン・ブックス社でピーターラビット、くまのプーさんほかプロモーションを担当した後、フリーランスに。

旅、酒、食、漫画、着物などの分野で活動しつつ、美味、美酒を求めて国内外を歩く。これまでに40か国へと旅し、日本を含めて28カ国約80件の世界遺産を訪問。著書に「英国貴族の館に泊まる」(小学館)、「ハリー・ポッターへの旅」「赤毛のアンの島へ」(ともに白泉社)、「ニッポン『酒』の旅」(洋泉社)など。2016年6月に「英国ファンタジーをめぐるロンドン散歩」(小学館)を上梓。

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