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連載企画

小山センセイの縄文徒然草 小山修三

第67回 ビーズ展-つなぐ 2017年4月21日

国立民族学博物館 開館40周年記念特別展「ビーズ-つなぐ・かざる・みせる」
(開催) 2017年3月9日(木)~6月6日(火)
(図録) 池谷和信編『ビーズ-つなぐ・かざる・みせる』 税込1,188円

ひさしぶりに引きこまれてしまう展示を見た。博物館の展示は名品が並べられているのを「すごい」と圧倒されながら見るのがふつうだが、今回は様子が少し違うのだ。

会場には見慣れたアクセサリー類のほかさまざまの資料がならんでいて、もちろん貴重な資料が多いのだが、ほかに現代のアート作品やファッションの服、世界に進出して活躍している会社のガラスビーズのサンプル、そして子供たちの工作コーナーやミュージアムショップまでが一体になって境界が見えない感じさえする。

いったい、ここにはビーズが何個あるんだ?と、ふと思った。図録には西アフリカの古ガオ遺跡出土の2万300個以上という数が出ているが、それでも少ないほうだと思う。もし、ビーズ1つ1つを博物館が登録管理しなければならないと考えると眩暈がする。企画にあたった池谷さんが「準備の途中で病気になり一か月寝込んでしまった」とこぼしていたのがよくわかる。

展示場をまわると、ビーズとは何かを改めて考えさせられる。
まずは、素材の多様さ。動物は、貝、牙、歯、骨、卵の殻、鱗、スズメバチの頭。植物は、花、種子。鉱物は、石、金銀、鉄。現代はプラスチックや紙。とくに人の骨や歯を使うと「おしゃれ」よりも、心の問題が忍び込んでくる。ヒスイ、コハク、カーネリアン、これらは交易品として長い距離を広範囲にわたって運ばれて、各地域をつないでいるのである。もっとも古いビーズは10万年前のカフゼー遺跡(イスラエル)とされるが、素材に使われた貝は50キロも内陸へ運ばれているという。そんな現象は世界各地にあり、近現代にはヨーロッパのガラス製品が新世界やアフリカに持ち込まれて植民地統治の役割を果たしていた。それらの製品は糸でつなげられ、ならべられて平面をつくり、絢爛豪華になって権力や富を誇示することになる。ビーズはツルツルピカピカが好きな庶民の「おしゃれ」の道具だと思っていたのだが、世界の社会の構造や変化を見事にあぶりだしているのである。開館40年、世界の民族資料を営々とあつめてきた成果がここに表れていると言える。

しかし、民族資料は空間(分布)には強いが、時間軸についてはやや弱い。それを補うのは考古学である。日本では各地で盛んに発掘が行われ、遺跡には博物館、資料館がつくられ、復元ワークショップに人気がある。それを利用して地域の文化の焦点を装飾品に当てる。とくに縄文時代や古墳時代の土偶や埴輪には装着状態が分かるものがある。これに民俗資料(例えばイタコの数珠とか)を付け加えると、地域の文化を時間軸として明らかにできるだろう。

みんぱく(国立民族学博物館)では、独自に企画した展示については「巡回展」の要請があれば受けており、千里文化財団でそのお手伝いをしている(ビーズ展はまだ具体案は決まっていないのだが)。
両者を合体させると、魅力ある企画となるのではないだろうか。

国立民族学博物館 開館40周年記念特別展
「ビーズ-つなぐ・かざる・みせる」

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プロフィール

小山センセイの縄文徒然草

1939年香川県生まれ。元吹田市立博物館館長、国立民族学博物館名誉教授。
Ph.D(カリフォルニア大学)。専攻は、考古学、文化人類学。

狩猟採集社会における人口動態と自然環境への適応のかたちに興味を持ち、これまでに縄文時代の人口シミュレーションやオーストラリア・アボリジニ社会の研
究に従事。この民族学研究の成果をつかい、縄文時代の社会を構築する試みをおこなっている。

主な著書に、『狩人の大地-オーストラリア・アボリジニの世界-』(雄山閣出版)、『縄文学への道』(NHKブックス)、『縄文探検』(中公 文庫)、『森と生きる-対立と共存のかたち』(山川出版社)、『世界の食文化7 オーストラリア・ニュージーランド』(編著・農文協)などがある。

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