先日、日テレの『ミリオンダイス』という番組で、お笑いコンビのチュートリアルさんが、縄文生活に挑戦するという放送がありました。
生まれて初めて縄文土器をこねて、野焼きにしたマイ・縄文土器を手にしたボケ担当の徳井義実さんが、「まるで初孫を抱くみたいやあ…」とおっしゃっていたのが可笑しかったです。
最近、テレビでも縄文が取り上げられることが多くなりましたが。縄文の良さって一体何なんだろう? と、ふと思って考えたところ。ひょっとすると私たちは「縄文」という、未来を手に入れたいのではないか? と考えるに至ったのです。
大阪を拠点に、家具・空間・プロダクト・グラフィックのデザインから食、アートにわたってさまざまなクリエイティブ活動を展開するgrafの豊嶋秀樹さんは、青森県を代表する現代美術作家の奈良美智さんと旅を続け、作品を展示する空間美術としての「小屋」を造っていた人なのですが。
彼が、40棟以上の小屋作品を、青森県弘前市の吉井酒造煉瓦倉庫内に作り、作品を展示する奈良美智さんの集大成的な展覧会「AtoZ」展(2006年)を、開催する前に彼は、こんなことを語っていたのです。
「(中略)タイのチェンマイにランドっていうプロジェクトがあって。あれをカミンに連れられて見に行ったときに、ただの田舎の水田の風景でボロい小屋があって、それを見て超未来って思ったんですよ。
そのときどうしてそんな気分になるのか、よく分からなかった。でもよく考えたら自分が理想としている生活像で今ないものだから、自分にとって。手に入れるとしたら未来でしか手に入れられないから、未来に見えたのかなと思った。」(STUDIO VOICE 2005年10月号より)
チュートリアルの徳井さんにとって、「初孫を抱く」というのは未来にしか、手に入れられないことだと思います。私たちの現代の生活では、縄文土器を焼くとか、裸足で野を歩くとか、丸木船に乗って遠洋に漕ぎ出すという縄文時代の当たり前の生活というのは、未来にしか手に入らない世界なのではないか……? と。そう思った次第です。
現代を生きる我々は、自分が使う食器を作ることなど、一生ないのかもしれません。ゆっくりと土を捏ね、乾かして。しかも、野に火を放って焼くなんて。ありえないことかもしれないのです。
昨年の、三内丸山縄文教室では、そんな未知の体験をすることができました。
縄文土器作りに参加して、子供達と一緒に縄文土器をこね。遺跡の一角で野焼きにチャレンジした日。
ゴーゴーと燃える野焼きの炎に飛び込む職員のOさんの姿がまるで、縄文人のように見え。
「こんな光景は今まで、見たことがなかったなあ…」と。やはり、縄文遺跡には未来に手にしたいたくさんの魅力が、つまっているように見えたのでした。