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連載企画

だびょん縄文

第1回 三内丸山遺跡の植物園で 2018年6月20日

去年からボランティアガイド有志で三内丸山遺跡の植物園の草刈りをしている。
「えっ 植物園ってどこ?」とほとんどの方が思われるのでは。実はあまり知られていない縄文の庭があるのです。縄文時遊館を出ると、道が二手に分かれ、左の道は遺跡へ、右は青森県立美術館へ通じる「縄文の小径」です。「縄文の小径」を20m程進むと左手奥に大きなヒバ製の棚が見えてくる。クリ、ガマズミ、トチ、ニワトコ、ヤマグワ、ヤマブドウ、コクワ(サルナシ)、カラムシ、アカソ等縄文の植物が生えている。
草を刈りだしたら、「ありがとね」ってあちこちからヤマブドウ、アケビ、ニワトコ、クルミの幼木がほっこり顔をみせた。植えたわけでもないので、ずーっと地下で時を待っていたのか、もしかして君たち縄文の子孫?

先日、「縄文木こりで外来種を伐採しよう」という子ども向けの縄文講座に参加させてもらった。三内丸山遺跡の専門職員に石器の講義を受け、いざ本番。外に出て直径約15センチ位のニセアカシア(外来種)の伐採をした。参加者は小学生とその家族。一人一回20打で交代するルールで伐採をはじめた。そんなに力を入れなくてもわりと簡単にサクッサクッと切れ、木の香りもほのかに漂い気持ちが良い。子どもの頃、おこづかい10円で手伝わされた冬支度のストーブのまき割よりはるかに楽だ。
ほほえましい場面にも出会えた。お父さんが一振りする毎にニセアカシアの白い花が雪のようにバラバラバラ。オーと子どもたちの歓声。兄弟なのか代わる代わるお母さんに「お父さんが切ったらね、花がぱらぱら落ちてきたんだよ。」と少し興奮気味に話していた。お父さん尊敬株急上昇。いいねぇ、縄文家族じゃないかとこちらまでうれしくなる。

縄文木こり

植物をただボーッと見ているだけでは決してこんなほほえましい縄文家族とは出会えない。カラムシ畑で糸を取り、布を編んでみる。木や花を見て、匂いをかいで、収穫して、料理して、食べてみてと気付くことがたくさんあるはず。植物園は遺跡とはまた違う衣・食を体験できる森の縄文である。
いつか子ども達が植物園で木に登ってクワの実を食べたり、ヤマブドウやコクワの実をすりつぶしてジャムを作ったり、クリも拾い、キノコ採りができたら、もしかしてまた微笑ましい縄文家族に出会えるかもしれない。そして人は森の恵みで命を紡ぎ、今もたくさんの恩恵を受けていると感じてもらいたい。こんなことを考えると草刈りも少しは楽しくなる。

今、コクワの可憐な花がたくさん咲き、豊かな秋の実りを予感させる。ぜひ縄文植物園にも足を運んでみてはいかがでしょうか。

コクワの花

プロフィール

だびょん縄文

主婦 三内丸山応援隊ボランティアガイド歴23年
青森県立郷土館協議会委員 じょうもん検定上級合格者

三内丸山遺跡でガイドをして縄文遺跡に魅せられ、
全国各地の遺跡を訪れ、ますます魅せられ、
正真正銘の縄文ファンとなる。

「青森県民は三内丸山遺跡で元気をもらい、今ももらい続けています。
だから100年200年後の人たちに世界遺産という大きいリボンをつけて贈ることが今の私たちの任務だと思い、日々活動しています。」

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