「くどパン」と地元の人から呼ばれて親しまれている青森県のパン屋さん、工藤パンから、土偶パン『くどパンのどぐパン2』が発売されたという記事を読み、さっそく近くのスーパーへ行った。うれしさのあまり買いしめたら、レジの方から「これ、そんなにおいしいの?」と聞かれてしまう。
『どぐパン』は2種類で、一つは『どぐうあんぱん2』。「しゃこちゃん」と呼ばれて愛されている亀ヶ岡石器時代遺跡(つがる市)の遮光器土偶がモデルになっている。袋に土偶の顔が描かれ、袋から取り出すとあの特徴ある目が出てくる。あんことクルミ入りでほのかに甘い。もう一つの『どぐうメロンパン』には十腰内2遺跡(弘前市)のイノシシが登場。表面はクッキー生地で少し硬く、背中の白い筋が妙に可愛らしい。少し甘いマロンクリーム入り。どちらも包装の絵が愛らしく、封を切るのがもったいない。子どもが見たら絶対手にするような気がする。裏には「みんなでめざそう!世界遺産登録」。多くの人が日常に利用するコンビニやスーパーで世界遺産登録を宣伝するのはユニークで話題性もあり大事なことだと思う。納豆のふたをあけたら合掌土偶がいたり、しゃこちゃんの絵入りリンゴが実ったり、なんて色々あったら楽しい。『どぐパン』の肝心のお味はどうかというと、もちろん世界遺産のお味でしたよ。
7月末に北海道・北東北の縄文遺跡群の一つ、御所野遺跡(岩手県一戸町)で「カラムシの繊維取り体験」に参加した。カラムシとはイラクサ科の植物で、道路端や川沿いに群生している。その茎から繊維を取り、布を編む。縄文の遺跡からは、アカソ、カラムシの繊維で編まれた布が出土している。
実は、3月にも御所野遺跡へ出かけて、シナの木の編布(あんぎん)コースターとクルミの皮のカゴ作り体験をした。材料はあらかじめ水につけて柔らかくしてある。「こもつち」という道具に経糸(たていと)をかけて編み始める。シナの皮は薄いピンク色で幅も一定に割かれていて結構扱いやすく、すいすい編める。暖かい春の日差しを感じながら、カラカラと鳴るこもつちの音が心地良い。これらの材料は自分達で山に入り調達しているという。直径20~30cmのシナの木やクルミの木はのこぎりで切り倒し、車も入れない山の中なので持ちやすいように切って背負ってくるという。なんと縄文人! その逞しさに脱帽。彼女にとっては当たり前の普通の話かもしれないが、よそ者にとっては驚きで面白くて、一気に御所野ファンになる。

クルミの皮で編んだカゴ(左)とシナの木の編布コースター(右)
7月は「カラムシの繊維取り」と「自分で作った繊維(糸)でコースター作り」体験だ。気温35℃の中、遺跡の中のカラムシ畑へ向かう。もう終わりの時期ということでかなり刈り採られていた。高さ50cm、太さ1cm位のカラムシを5本採る。茎に小さな棘があるにもかかわらず、「手袋は履かないで、葉は一気に取って下さい。」とここでも縄文スタイル。そこまで縄文でなくても…。案の定、手がチクチク痛い。道具を使って表皮を剥ぐと少し青味がかった光沢のある美しい糸が取れた。午後からのコースター作りが楽しみだ。こちらは糸が短い分、糸の繋ぎに苦労してしまった。
畑に行ってカラムシを採取し、コースターが完成するまで約3時間半。さすがに疲れた。それでも縄文人と同じ仕事をしたと思うと縄文人とつながっているような気がして気持ちが温かくなる。

カラムシの繊維を一本一本剥ぎ取っていく

完成したカラムシの編布コースター。自然の風合いがやさしい。
三内丸山遺跡でも、琥珀のアクセサリー作りや縄文ポシェット作りを体験する大人が増えている。時間を気にせず、集中している。「できた!」と満足そうな顔は子どもたちがする顔と変わらない。ニコニコと笑顔で大事そうに持って帰る。
遺跡を訪れたら、体験教室にも足を運んでみてはいかがでしょうか。作っていると、縄文人がより身近に感じられますよ。そして思った以上にうまくできたなら、それは縄文人が手助けしてくれているのです。きっと。

国内推薦候補決定を受け、御所野遺跡の地元では
「縄文カレー」や「縄文ジェラート」も発売されるなどの盛り上がりを見せている。
青森市からは車で約2時間で行くことができる(高速道路使用)。
四季折々の表情も美しい御所野遺跡に訪れてみてはいかがでしょう。