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連載企画

縄文遊々学-岡田 康博-

第24回 イギリスJOMON紀行(4)「JOMON in LONDON」 2010年2月8日

さて、今回の訪英の目的は、在英の考古学者や歴史学者、日本文化の研究者等を対象に縄文文化の説明会を開催するためです。ちょうど大英博物館では土偶展が開かれていましたので、この機会を積極的に利用することにしました。

説明会場(ソサイティーオブアンティクオリーズ)


 

会場はロンドンの中心部、ピカデリーサーカス(サーカスといっても曲芸のサーカスとは関係ありません)にある、ソサイティーオブアンティクオリーズ、ロンドン考古学評議会会館という大変由緒ある建物です。かつて、この場所で、シュリーマンがトロイの発掘成果を発表したとのことでした。幼き日に聞かされたトロイの木馬の話からそのトロイの都を発見した『古代への情熱』で知られているあのシュリーマンです。カーターの『ツタンカーメン発掘記』と並んで、歴史ファンのみならず、小学生の時に読んだ方は多いのではと思います。

説明会ですが、縄文文化を正しく知っていただくために、日本を代表する縄文文化研究者である小林達雄 國學院大學名誉教授と岡村道雄 奈良文化財研究所名誉研究員の両先生に御講演をお願いしました。さらに私からは、本県の世界遺産の取り組みについて説明させていただきました。発表のスライドは、英語版を自力で何とか作りましたが、さすがに発表は日本語でさせていただき、逐次英訳してもらいました。中学生以降8年間、英語を勉強したはずなのに実践にはあまり役に立たないのは、本人の不勉強もありますが、それ以外の理由もあるのではと勝手に思ったりもしていますが。

説明会の様子


 

講演終了後、意見交換を行いましたが、今後、世界遺産を目指すにあたって非常に参考になる意見がありました。縄文文化については、イギリスの同時代の新石器文化と比較しても非常に安定した文化であると受け止められたようです。イギリスでは、狩猟採集文化は非常に不安定であったために農耕文化へと早く移行したが、日本では安定していたために農耕や牧畜を行う必要がなかったのでは、との意見が出されました。

また、縄文文化は、現代社会が抱える環境や食の問題についても様々な示唆を与えられるので、世界遺産を目指すことについては賛成するとの意見もありました。半日の説明会でしたが、内容の濃い充実したものであったと言えるでしょう。

今回の説明会の開催にあたり、イギリスにあるセインズベリー日本藝術研究所の全面的な協力を得ることができました。ニコール・ルーマニエール所長さんやサイモン・ケイナー副所長さん、日本から留学中の松田さん、永瀬さんをはじめとして多くの方々には、大変お世話になりました。この場を借りて、御礼申し上げます。

講師の先生、セインズベリー日本藝術研究所の皆さんと

プロフィール

岡田 康博

1957年弘前市生まれ
青森県教育庁文化財保護課長  
少年時代から、考古学者の叔父や歴史を教えていた教員の父親の影響を強く受け、考古学ファンとなる。

1981年弘前大学卒業後、青森県教育庁埋蔵文化財調査センターに入る。県内の遺跡調査の後、1992年から三内丸山遺跡の発掘調査責任者となり、 1995年1月新設された県教育庁文化課(現文化財保護課)三内丸山遺跡対策室に異動、特別史跡三内丸山遺跡の調査、研究、整備、活用を手がける。

2002年4月より、文化庁記念物課文化財調査官となり、2006年4月、県教育庁文化財保護課三内丸山遺跡対策室長(現三内丸山遺跡保存活用推進室)として県に復帰、2009年4月より現職。

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