7月30日午後3時過ぎ、世界遺産国内推薦候補決定の一報が応援隊に届く。それを聞きガイドたちが「やった!」の大声援。喜びを爆発させている様子にお客様が「この瞬間に立ち会えたことは凄くうれしい」と話されていた。リンゴジュースをおすそ分けして、再度乾杯。
実は数日前から今日のこの瞬間を考えるとドキドキしっぱなしで健康上良くない日々を送っていた。今夜はゆっくり寝れるかなと思いきや、今までのいろいろな出来事が思い出され興奮してまた寝付けない。長いトンネルを抜けた先に、かすかな光が見えてきた。よし、この光に向かってまた歩いていこうと新たな力が湧いてきた。

世界遺産になるぞー!!!
世界遺産登録に向けて各地でいろいろなイベントが行われている。
6~7月に五所川原市内やおいらせ町内の大型ショッピングセンターで開催された「あおもりJOMONフェスタ」には、さまざまな縄文ワークショップの整理券を求めて朝早くから長蛇の列ができ、たくさんの家族連れで賑わっていた。このイベントが地域の方の1年に一度の楽しみの一つになっているのかも。縄文が日常にあたりまえのように溶け込んで、かつ楽しんでいる子どもたちを見て、未来に縄文が確実に受け継がれていくような気がする。

ワークショップに挑戦
今、三内丸山遺跡センターは、ねぶた祭りのようにソワソワしている。漆を思わせるような赤いポスターがあちこちに貼られているせいかもしれない。7月20日から開催している夏季特別展「あおもり土偶展」のポスターだ。ポスターの主役であり、縄文ファンが待ちに待った遮光器土偶が三内丸山で見られるのだ。

縄文くらら(土偶:重要文化財)
(野辺地町有戸鳥井平(ありととりいたい)4遺跡)
7月19日、内覧会。入口にある大きさ3センチの小さな土偶が「東北最古です」の説明に、おおーっと声が上がる。壁に土偶の移り変わりの年表が貼られていて、見学前の予備知識を得られるようになっているのが嬉しい。同じ時期の土器と土偶がセットで並べられていて、土器が変化すると土偶も変化する、と説明文を読まなくても、展示を目で追っていくだけでも理解できる。土偶が変化するといっても、前の土偶の形を継承しながら変化していることがわかりやすく展示されている。
先へ進むと、我ら三内丸山遺跡の大型板状土偶が直立している。いつもとは違うまっすぐな姿勢に、結構身長が高いことを発見。青森県野辺地町出身の短足胴長の土偶も妙に気になる。太い脚と大きな足、胸を張った姿はまるで高安関の四股をふんでいる様子にそっくり。たくましく愛嬌があるこの土偶は、地元では「縄文くらら」の愛称で親しまれている。
続いて遮光器土偶コーナーへ。
遮光器土偶は東北地方北部を中心に、北海道や近畿地方でも出土しているそう。亀ヶ岡遺跡の遮光器土偶を見た人が衝撃を受け、さっそくムラに帰って作り、またその土偶を見て他のムラの人が作る、なんて広がっていったのかな。遠くに行けば行くほど、顔の表情や体につけた模様も変化していて、本家のそれとは違い、どことなく抜け感があり、心落ち着かせ、ほっこりする。今、流行は抜け感、脱力感を感じさせるファッションで、それに通じる土偶が人気を押し上げているのでは。
そして主役登場、「次は遮光器土偶です」の言葉に全員が集まり出す。「後ろはなかなか見る機会がありませんが、今回は横、後ろと、じっくり観察してください」。やはり、本家の土偶は凄い。抜け感、脱力感、ゼロ。少しの隙もなし。全身緊張感満載のKing of 遮光器土偶だ。
閉館後、いつもの土偶トークが始まる。
本家「ちょっと、あなたたち、模様ちがうでしょ。マネするならちゃんと見て、作ってよ」
他の土偶「すっ、すみません」
夏休みに入り、三内丸山遺跡には家族づれが増えている。小学生の質問が素晴らしい。発掘調査現場見学後に、「溝って水が流れていたんですか?」と。「水が流れていると砂などが残りますが、そうではなく地面が硬くなっているので、道路かもしれません。」との担当者の説明に、そばで聞いていた大人たちも「ほー、なるほど」と納得。体験工房でも「縄文ポシェット」を作りたいという小学生に、まず本物を見てほしくて展示場所に案内した。「あっ、クルミだ。」目を輝かせてじっと見ていた。そして明日もまた来たいと親にだだをこねている姿が可愛らしい。
感性豊かな子どもたちが遺跡で本物を見て、いっぱい遊んで、何かを感じてくれたなら、縄文人の心はきっと受け継がれていくはずだ。

公開中の発掘現場で大人も子どもも興味しんしん