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連載企画

だびょん縄文

第16回 特別企画展「発掘された日本列島 2019」を見て 2019年11月7日

秋の夜長に女性合唱団のコンサートに行った。青森市のこの合唱団は指揮者である小倉尚継氏が創作された歌を歌う。「世界遺産コーラスの旅」、「青森県探検コーラスの旅」など、青森県に伝わる昔話を格調高く、ある時はコミカルにと楽しませてくれるので、いつも時間があっという間に過ぎてしまう。指揮者が高齢になられたということで今回の公演が最後となった。プログラムを開くと第4ステージ「縄文ロマンの泉」で三内丸山遺跡の歌が4曲歌われることとなっていた。1曲目の「栗巨木運搬図」は「ホーハー ホーハー エシャシャエホー エシャホホエラーショ 運べ運べ 神様住まわるお社造ろう・・・・」で始まり、美しいハーモニーにのせたオノマトペが効果的で柱を建てる喜びが伝わってくる。汗を流し、掛け声かけて大木を運んでいる様子が目に浮かんできて、また遺跡が恋しくなる。

「発掘された日本列島 2019」が三内丸山遺跡センターで開催された。毎年、江戸東京博物館から始まり1年かけて全国5会場で開催され、今年は三内丸山遺跡がその会場の一つとなった。地元で開催されると時間を気にせずじっくり見れるし、専門職員による土日限定の展示解説にも何回も参加できるのでより理解が深まる。解説を聞き、展示されているそれぞれが日本を代表する遺跡であるということに感動し、こういう展示を三内丸山で見られることにまた感動している。日本最大級、日本初といった言葉がついている遺跡の中に青森県の「白神山地東麓縄文遺跡群」も紹介されている。個性的な土偶や人面付き土器など、縄文のデパートのようにさまざまな遺物が展示され、見応えもあり、ちょっと誇らしい。

白神山地東麓縄文遺跡群の展示

近世の群馬県長野原町の東宮遺跡では浅間山噴火による泥流に飲み込まれた村の遺物が展示されている。漆を塗ったお椀やモダンなデザインの美しい皿等が展示され、山村でありながら、こういうりっぱな道具を使っていたのかと江戸時代の生活水準の高さにびっくりする。酒造りをしていた村というので裕福な人たちだったのかな。うちわはねぶた祭で使うそれよりずっと大きくて、骨は竹製、透かし模様が入り、見た目もいかにも涼しげで一振りするとさあーっと涼しい風が吹いてきそう。下駄も展示されている。先日まで開催されていた青森県立郷土館の特別展「ひらく つくる みのる」でも平安時代、十三盛遺跡(青森県五所川原市)の下駄を展示していた。ヒバ製で一本の木から削りだされていて、45本も見つかっている。時代はちがうけれど、鼻緒の穴の位置がずれている下駄もあり、東宮遺跡と似ていておもしろい。

泥流で埋まった東宮遺跡の展示

この企画展に併せ、さんまるミュージアムでは「こわれた。からみえる土器」という地域展も開催された。こわれた土器を、炉に、漆を入れるパレットに、円盤状にしてまつりの道具などに再利用している。壊れたかけらをそのまま利用しているものもあるが、壊れた土器にきれいに直線を引き、それにそって割れるように工夫されているのは円盤状の道具をつくるためかもしれないと説明された。土をこねて作った方が簡単じゃないかと思うが、縄文の人にとってはどうも違うようで再利用の円盤状土製品は百単位で見つかっているという。「よっ!エコ大先輩」とお呼びした方がいいのかも。また、「円筒上層式土器の口縁部の土には砂を混ぜているのとひもを貼り付けているので丈夫で壊れにくくなっています」、とも話された。「えっ、何故口縁部だけ?」と謎が深まるばかり。「かけら」がこんなに情報を持っているなんて初めて知った。
パネルには、「かけらは多くの人をひきつけ、考古学の研究を発展させる原動力となっていったのです」と。がんばれ!かけらさん。
芸術の秋にふさわしい素晴らしい遺跡の品々にふれることができました。

きれいな線で土器を切断

 

土器のかけらから作られた円盤状土製品

プロフィール

だびょん縄文

主婦 三内丸山応援隊ボランティアガイド歴23年
青森県立郷土館協議会委員 じょうもん検定上級合格者

三内丸山遺跡でガイドをして縄文遺跡に魅せられ、
全国各地の遺跡を訪れ、ますます魅せられ、
正真正銘の縄文ファンとなる。

「青森県民は三内丸山遺跡で元気をもらい、今ももらい続けています。
だから100年200年後の人たちに世界遺産という大きいリボンをつけて贈ることが今の私たちの任務だと思い、日々活動しています。」

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