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連載企画

だびょん縄文

第17回 あなたにとって世界遺産は何ですか 2019年12月6日

「あなたにとって世界遺産は何ですか」。11月9日に開催された世界遺産登録推進青森フォーラムでの問いかけである。
今まで「祈る!世界遺産」しか考えていなかったので、この問いかけには正直ドキリとした。講演者は国立大学法人筑波大学教授の稲葉信子先生で、続けて「世界遺産になっても終わりではない。世界遺産の重みがずっと続く」と話された。「世界遺産の仲間になるということはどういうことなのか」とまた問いかけ、「保護、保全においても最高のモデルであることが求められている」、「世界遺産のジグソーパズルの1ピースになり、どう貢献できるのか」と。
永久的に遺跡を保護し続ける責任、ジグソーパズルの1ピース、今まで考えたことすらなかった世界遺産の本質、言葉一つ一つが心に刺さってきた。いくら世界遺産といっても私たち地域の人が守っていかないと朽果ててしまう。現に世界遺産1121件の内53件が危機遺産になっているという。自然環境や都市環境の悪化、戦争が原因なのか、この話にもびっくりする。北海道・北東北の縄文遺跡群を構成している17の遺跡を一つも欠けることなく守り続けられるか、その覚悟を私たちに問われていたのだと思う。最後に世界遺産委員会で審査される時に「アフリカの人々に縄文を『ワオ!』と言わせることができるか」、そして「縄文の何を未来に伝えていくのか」を考えてほしいと話された。稲葉先生!名もなき人々の1万年の生き方を切れ間なく証明できる遺産って、絶対ワオ!だと思いますがいかがでしょうか?

同フォーラムでは、鈴木地平文化庁文化資源活用課文化財調査官により世界遺産になるためのプロセスや、先例である「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」や「百舌鳥・古市古墳群」についてのイコモスとのやりとりなどを話された。そしてイコモスが行う現地調査では地域の人々が遺産の保護にどう参画しているのかを問われると。行政だけに任せるのではなく、みんなが自分に課せられた問題として考えなければならないし、世界遺産に対しての責任であるという。
フォーラムで配られた資料では各遺跡の活動報告もされ、それぞれの地域がそれぞれのやり方で遺跡を未来に渡す第1歩が足並みそろえて始まった。「おらほの遺跡が一番だ」からお互いの遺跡の価値を知り、尊敬しあい、仲間意識を持って、共に歩み、助け合うことも求められているような気がする。

前回も書いた、土器の「かけら」に注目した三内丸山遺跡の企画展。既に終了しているが、あれ以来、「かけら」が気になり、「かけら」を求めてさんまるミュージアムに出かけた。見つけました!南盛土の層位を表しているガラスケースの中で。制作途中なのか中央の穴が貫通していないし、たわみ、割った断面も良くわかる。土偶のような派手さもない、縄目模様だけのかけらだけど、縄文の人にとっては大事な物だったのだろう。

未完成?円盤状製品

 

実はさんまるミユージアムには他にも興味深いかけら3枚が並んで展示してある。かけら3姉妹か、一枚目が人体、二枚目がシャーマン、三枚目は顔。いずれも土器の一部に描かれたり、貼りつけられたりしている。

 

お顔(人物文様付き土器)

たくさん出土していないということは流行の意匠ではなく、この土器は特別なもので特別な人が作ったのだろうか。厳密には再利用されたとは言えないがこの絵を残そうとした気持ちは伝わってくる。特に3人目の顔はあごをしっかり残そうと努力しているのがわかる。人に対する敬いの表現なのだろうか。そんなことを考えると、縄文人が愛おしく、気持ちが不思議とおだやかになってくるのは、今でも縄文の人が遺物を通して語りかけ続けているからではないでしょうか。

雪もちらつく静寂な初冬の三内丸山で縄文人の心に出会ってみませんか。

縄文人も見たかもしれない頂上に雪の八甲田

プロフィール

だびょん縄文

主婦 三内丸山応援隊ボランティアガイド歴23年
青森県立郷土館協議会委員 じょうもん検定上級合格者

三内丸山遺跡でガイドをして縄文遺跡に魅せられ、
全国各地の遺跡を訪れ、ますます魅せられ、
正真正銘の縄文ファンとなる。

「青森県民は三内丸山遺跡で元気をもらい、今ももらい続けています。
だから100年200年後の人たちに世界遺産という大きいリボンをつけて贈ることが今の私たちの任務だと思い、日々活動しています。」

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