12月20日午前11時のニュースで縄文遺跡群の国内推薦が決定されました、と。淡々と話すアナウンサーの言葉にようやくたどり着いたのかと感じた。菅官房長官の「精緻で複雑な精神文化を示す。世界遺産登録へ向けて政府として関係自治体と連携し、最善を尽くす。」の一つ一つの言葉に重みを感じ、実感がわいてきた。一気にアクセルを踏まれて加速されたような気がする。クリスマスプレゼントとお年玉を一緒にもらったようでうれしい。
2006年から世界遺産を目指して14年。三内丸山遺跡ガイド歴24年、半分は世界遺産と共に歩んできたのかと思うと感慨深い。国内推薦に至るまでの年月は発展の14年だったと思う。三内丸山遺跡にとっては、大規模な発掘調査が行われたり、史跡の指定範囲が追加されたり、三内丸山遺跡センターも増築・整備され、連日多くの観光客が訪れている。未来の担い手の小学生、中学生、高校生は縄文の価値を伝える出前講座で知事の講義を受けたり、実際に現場でガイドしたりもしている。地域の方も縄文グッズを開発するなど、世界遺産を目指したからこそやってきた賜物だと思う。2021年のその日まで1年半。世界の評価がどう下されるかワクワクしている。
青森市近郊には縄文遺跡の出土品などを展示している施設が4ヶ所ある。青森県立郷土館、三内丸山遺跡センター、縄文の学び舎・小牧野館、少し足を延ばして、昭和の香りがプンプンする小さいけれど遺物はすごい外ヶ浜町大山ふるさと資料館。これらを見て廻ると一気に縄文通になれるかも。その中でも青森県全域の遺跡を展示している青森県立郷土館は老舗中の老舗。普段でも見応えのある展示をされており、現在は企画展「縄文遺跡群と県立郷土館-発掘調査の軌跡-」が開催されている(令和2年1月30日まで)。
学芸員の解説で「今回展示してある900点の内500点が初公開です。」の話にまずびっくり。郷土館独自の調査で、調査期間は各遺跡2週間、調査面積も100平方メートル位でこのような成果があったという。当時の発掘写真も展示されていて、モノクロで服装などに何となくのどかさが感じられる。
ほかにも「弘前大学で持っていた土器に合わせたらこのようにピタリとくっついた。」とか「東北歴史博物館に貸し出しているもので、今回20年振りに帰ってきました。」となかなかのエピソードも話してくれた。聞いたことのない遺跡でも遺物は見応え充分。津軽半島の先端に位置する宇鉄遺跡(外ヶ浜町)からは、本州の弥生時代の管玉(くだたま)と大きな壺形土器が甕棺(かめかん)として、さらに、北海道の続縄文時代に見られるクマの取っ手付きマグカップ型の土器も墓から出ているという。今でいえば、青森市に移住者が住み着いたが、習慣は依然住んでいた地域のままでということなのか。北海道と青森の結びつきの強さと調和は縄文から弥生、そして今も続いている。籾殻(もみがら)の圧痕が付いた土器も初めて展示されている。

大きな甕棺 (宇鉄遺跡/青森県立郷土館蔵)

マグカップ (宇鉄遺跡/椀形土器/重要文化財/青森県立郷土館蔵)

岩偶 (三内丸山遺跡/青森県立郷土館風韻堂コレクション蔵)
三内丸山遺跡の岩偶は普段目にする土偶顔そのもの。
「えー、土をこねて作った方が楽じゃない!?」と遊び心満載のような岩偶も展示していて面白いですよ。

たくさんの長靴がお待ちしています