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連載企画

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第14回 田小屋野貝塚の人骨と発掘調査 2020年1月10日

田小屋野貝塚は昭和19(1944)年に、直ぐ南側、お隣の亀ヶ岡石器時代遺跡と合わせて国の史跡に指定されました。三内丸山遺跡とほぼ同じ縄文時代前・中期の遺跡で、大きな筒のような形の円筒土器が特徴の時代です。日本海側の縄文時代の貝塚は少なく、当時のムラの形と暮らしの様子が分かる全国的にも貴重な遺跡です。
田小屋野貝塚のほとんどの範囲は畑だったので、土の中に縄文時代のものがまだたくさん手つかずの状態で埋まっています。地面からせいぜい30~50㎝ほども掘ると、土器のかけらや石器が出るのはもちろんですが、縄文時代の竪穴建物跡や貝層などが傷つかない姿で遺跡内のあちらこちらで見つかります。
今から30年近く前(平成2~3(1990~91)年)、青森県立郷土館が県内の縄文時代の様相を明らかにするために、田小屋野貝塚の南西の崖際を発掘調査しました。そこで、狙った場所でちょうど竪穴建物と貝層が見つかり、当時の担当の方も驚き、同時に嬉しかったそうです。この時にイルカやクジラの骨、ベンケイガイの貝輪、未製品なども見つかっており、水産資源を利用した当時の人々の暮らしとものづくりの様子が分かったことも貴重な成果でした。現在、1月30日まで青森県立郷土館の企画展「縄文遺跡群と県立郷土館―発掘調査の軌跡―」「縄文遺跡群と県立郷土館―発掘調査の軌跡―」新しいウィンドウが開きますが開かれており、この時の発掘調査の出土品を一同に見ることができます。

田小屋野貝塚でいちばん有名な出土品は、縄文時代前期(6000~5500年前)の成人女性の人骨(写真)です。平成24(2012)年夏のつがる市教育委員会の発掘調査で見つかり、今はつがる市縄文住居展示資料館(カルコ)で展示されています。最近まで建っていた家の南側の庭木の間の地中浅くから見つかったのは予想外のことでした。日本列島は基本的に火山によってできた酸性土壌が中心となるため人骨は残りにくいものですが、人骨が見つかったお墓の上に、後の時代にヤマトシジミの貝が捨てられたため、その周りが貝のアルカリ成分により中和され、運よく残ったものです。あいにく頭蓋骨の部分があまり残っておらず、どんな顔つきの人だったのかははっきり分かりませんが、腰からお尻の部分の骨の特徴から、妊娠痕のある成年女性の人骨だと分かりました。家のそばの木の間でも、縄文時代の骨は手付かずで残っていたのです。

写真1 人骨出土状況

平成17(2005)年のつがる市の合併後、市教育委員会では田小屋野貝塚の全体像をつかむため継続して発掘調査を行い、居住域(家が集中する範囲)や墓域、貯蔵域、捨て場など集落(ムラ)の配置、時代ごとの移り変わりの様子もかなり分かってきました。それでも、これまでに発掘された範囲は、史跡に指定された範囲で1%にも満たないものです。
遺跡の中の広い範囲を注意して発掘すれば、遺跡の様子はより明らかになります。しかし発掘調査は遺跡を解体することにもなります。国の法律(文化財保護法)によって守られた特別の遺跡(史跡)については、遺跡の姿を明らかにする目的をはっきりさせ、最低限の発掘で必要な情報を得るよう配慮して発掘することにしているからです。発掘の技術や考古学の研究も日進月歩で進んでおり、新たな着眼点も出てきますので、当時にいくら注意して発掘調査をしても、今の目から見ると過去の発掘調査にはどうしても見落としが出ます。従って、後の時代に掘るほど、発掘調査で得られる成果は大きなものとなります。
電磁波で地下の遺跡の様子を探る地中レーダー探査の技術も進歩しています。しかし、実際に発掘する代わりに使うほどの段階には、まだ至っていません。『ドラえもん』のお話の中(てんとう虫コミックス36巻)には、地中の様子をカラーの立体映像で見せる「断層ビジョン」という22世紀の道具が出てきます。ドラえもんの発言によると、簡単に発掘できない古墳の中を調べる際などに未来の世界では使っているそうで、お話の中では、裏山に埋めた貯金箱を見つけることができるくらいの精度があるようです。さて、100年後にはこの道具は実現するでしょうか。
しかし、100年先にではなく、早く遺跡の地下の様子が分かることも今生きる私たちにとって重要なことです。その遺跡の価値が誰にも分からなければ後世に大事に伝えていくこともできません。
今は田小屋野貝塚と亀ヶ岡石器時代遺跡では、案内板の文字と写真でのみ発掘調査の様子を伝えていますが、つがる市では、これらの遺跡について遺跡公園として整備するための計画を作り、進めていくこととしています。その際は、発掘された地下の様子を来た人に直ぐ分かるように、竪穴建物跡や貝塚、お墓の場所の地表表示やデジタル技術を使った復元なども有力な案となるでしょう。そのためには、追加して発掘調査を進めていくことも必要になります。遺跡を守り未来に伝えつつ、内容を遺跡に来た人に分かりやすく伝えていくための取り組みを少しずつ進めていきたいと考えています。

(堀内和宏:つがる市教育委員会社会教育文化課)

写真2 田小屋野貝塚全景(南東から)

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