標題の「津軽峠」は西目屋村と鰺ヶ沢町の境界線にある。ちなみに津軽弁では異なることを「つがる」と言う。境界線は町村の境目で一歩踏み込めば「つがる町」であり「つがる村」になる。もしかすれば、だから津軽峠なのか?なんて考えれば楽しいじゃないですか。でもお客さんに、こんな内容でジョークを飛ばしても・・・理解はしてもらえない。ザンネン!
ところが、ここに立てば他の場所とは趣が異なるような気分になるのです。アクアグリーンANMONからわずか9kmの未舗装の道を、時に砂埃を被り、時に泥にまみれて来るからだろう。それだけに「異境の地」に立つような気持ちになるのかも知れません。向白神岳の山並みの向こうに日本海があり、ここは季節によっては山の端に沈む夕日を眺められる所でもあるのです。
峠は斜面を開削して造られた鶴の首のように狭く風が集められて走り抜ける場所で、心地よい風の道でもあり身も竦むような思いをする所でもあるのです。夏場の谷底が蒸されるような日には、ここが天国で緩やかな風が汗ばんだ体を優しく包んでくれるパラダイスになります。天候の具合によっては命を奪うほどの寒気と低温度に苛まれる過酷な環境なのです。
秋の晴天の日に峠に立てば、体の中を風が透過していくような体感を得られるときがあります。こんなボテボテな圧肉のボディーを風が透り過ぎるなどあり得ないのに、そんなことを感じるのが不思議です。私自身が風に融け込んでいるのだろうかと疑うことも楽しい。寂しさのために体の中を風が吹き抜けるとか・・・は聞くがそれとは確実に違うのです。
数年前「千の風になって」がヒットしましたが「千の風」って、あの大空を吹き渡っているのではなく、私の・・・否、私の心の中を吹いているのではないかと津軽峠に立つ時に思うことがある。やがて私も誰かの心の中を吹き渡らなければならない時がくるのでしょう。暖かい風でいられるように願うものの、今から努めても遅いのでしょうが・・・。