暑い夏休みも残すところ3日になったある日、弘前の児童館の小学生たちがecoリパブリックのメンバーに率いられて山に来てくれた。午前中は川原ではしゃぎまわり午後の時間は森を歩くという企画らしい。自然に放牧された動物のように土手下から子供たちの歓声が聞こえることは珍しいことだ。
短い私との時間をどんな形で演出するかを考えていたが何たって就学直後の一年生から六年生までと幅が広いのだから焦点を絞るのが難しい。手の届くブナの葉を一枚ずつ採って持たせた。「自然破壊!」と言うかなと思いきや音なしだった。でも、無言の子供たちの心は「あのオジサン、自然破壊してる!」と思っているのが感じられるのだ。
ヨシッ!ここが肝心!とばかりに話に突入する。「あのね何枚の葉を採ったかな?・・・そうだ13枚だったよネ・・・。この樹から13枚の葉っぱを採れば樹が枯れるだろうか?・・・枯れないよネ。
「自然破壊てネ、樹が枯れるほど何かすることなんだネ。だからこの樹は大丈夫なンだよ」子供たちに安心感のようなホットした表情が見える。(こりゃ上手くいったな、でもチビちゃんには無理かな)
チビちゃん・・・・私の手にしている杖に関心をみせてチョコチョコと触りたがる。黙って枯れ枝を拾ってあげるとニンマリと笑い、わが意を得たりとばかりに元気だ。子供は棒っきれを持つと不思議に振り回すという行動に走るものだが、先輩オジサンは杖にしているのでチャンバラはしない。
「そうだ!杖の使い方がうまいぞ!」との一言に他の男児が反応して棒っきれを探しはじめた。顔に当たるような枝を折って安全の形にしてあげると「オッ!すげーッ」とMy杖に御満悦で先陣をきって歩いている。
さァ!ここから本番だ。ブナ林の藪に踏み込んで(10mほどだけ・・・)みたが「ワー!ジャングルだ!」と驚きの歓声が後ろで叫ぶ。地方都市の子供でもこーなんだから都会の子供には大冒険だろうなと思った。ほどよく枯れ葉がしかれた所に座ってもらう。持参した絵本は、作・あいはらひろゆき、絵・下田冬子の「クックル」だ。
作者は白神の森で取材した作品でサブタイトルが「白神・縄文の精霊たち」の~ひかりのみち~編だ。上級生に替わりがわりに読んでもらうことにした。目の前のチビちゃん!目を輝かせて見上げているではないか。
「読むか?・・・」
「ン・・・・」と無回答!「やっぱりお姉さんたちの朗読は上手いね」と所々で補助解説を入れながらページをめくる。横並びの端にいた男児たちがモソモソと絵本の見える範囲に移ってくる。後半のページは私が読みながら傍らのブナの幹を叩いて臨場感を創る。森の精霊のクックル!
「ほら!そこにクックルがいるよ」と声をかけてみる。誰も驚くこともなくニコニコとしている。クロモジの小枝を全員に渡してあげると「ウワッ、いい匂いだ」と互いに顔を見合わせる。
「ほら、匂いって見えないでしょう。見えないけどあるんだよネ、森の精霊だって目には見えないけどチャンといるかもしれないね。」
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