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連載企画

縄文のワケ -菊池 正浩-

第24回 体験楽習 2010年5月11日

今年は、平城京遷都1300年にあたります。3月・4月は、「45日間奈良時代一周」という番組でおおわらわでした。今年1年、奈良にかかわることになりそうです。これがほんとの「奈良づけ」(?)といった気分です。

お月見縄文祭のワークショップ「仮面づくり」

ところで、先日、平成遷都1300年記念事業協会の事務局の福井昌平プロデューサーにお話を聞く機会がありました。そこで、「体験楽習」というお話をうかがうことができました。 ひところのように、企業の協賛を得て、パビリオンをたくさん並べるというスタイルは、このご時勢難しくなってきています。

そこで、注目されているのが、この「体験楽習」という発想だそうです。

英語では、ラーニング・エクスペリエンスというらしいのですが、「体験学習」ではなく、

「体験楽習」と訳したところに、ポイントがあるようです。

たとえば、平城宮で、「なりきり体験」といって、奈良時代の貴族の服装を貸し出しています。それを着て、歩き回るだけで、みやこびとになった気分になれるということで、大人気だそうです。そういえば、ヨーロッパのあるサーカスでは、来場したお客さんの鼻に、必ず紅を塗るそうです。その瞬間、みんなサーカスのピエロになった気持ちになるそうです。要するに、大事なことは、「きづき」と「自発的な参加感」です。それが、いわゆる押し付けられた教育との大きな違いではないでしょうか?

付け加えて言えば、欧米では、環境やアートをテーマにして、いろいろなラーニング・エクスペリエンスの運動が展開されているようです。フランスのエコ・ミューゼ運動などが、

有名だそうです。ただ、日本での歴史・文化の「体験楽習」の試みは、まだまだだということです。

たまたま、三内丸山遺跡のお月見縄文祭のワークショップで、毎年、縄文の仮面づくりをやってきました。毎年、参加する親子の生き生きした表情に助けられて、回を重ねてきました。その魅力はいったいなんなのか、よく分からないながら、続けてきました。

よく考えると、これなんかも、立派な「体験楽習」のひとつではないかと言うことに気づきました。

実は、日本各地のそれぞれのところで、すでに、「体験楽習」は実践されているのではないかという気がします。それを持ち寄れば、きっと、より魅力的な「『学び』と『観光』が融合した新しい『参加体験楽習』プログラム」が生まれるのではないでしょうか。

しばらく、体験楽習にこだわり続けてみたいと思っています。

プロフィール

菊池 正浩

番組プロデューサー。

NPO法人・三内丸山縄文発信の会会員。 1946年生まれ。青森県弘前市出身。早稲田大学卒業。NHK入局後、美術・歴史番組を担当。 1994年NHK青森放送局で大集落発見直後の三内丸山遺跡を紹介。

その後、東京で NHKスペシャル「街道をゆく」「四大文明」 「日本人はるかな旅」「文明の道」などを担当。

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