東北関東大震災で被災された皆様、心からお見舞いを申し上げます。
家族や家を喪われて、この先はどうなってしまうのだろうかと不安にさいなまれる夜をすごしておられる方々も多くあることと察しています。
被災されて、避難所におられる子ども連れのお父さんお母さんたちは、子どもが泣いて自分も涙がでたり、無邪気な様子を見て、やっぱり涙がでたり、その無邪気さでさえ喪われてしまうのではないかと心配して、また涙がでることもあるのではないかと思います。
比べものにはならないような体験ですが、私も家族の一人を喪ったときに、暗くて長い長いトンネルに入ってしまって、この暗闇から脱することなど考えられないと感じていたことがありました。
まだ小さかった子どもたちが輝くばかりだった天真爛漫さを喪って、苦しむことになりはしないかと怖くなる毎日がありました。
そんなとき、ある人が言いました。
「お母さん、子どもの心は本来健やかなものです。やりなおせますよ。何度でもやりなおせばいいんです。」
また、ある本にはこんな言葉がありました。
「明けない夜はない」
長いとんねるの先、夜明けは、いきなりは来ませんでしたが、
いくつかの音楽といくつかの言葉、
なんにんかの友人ともう一度笑うようになった子ども、
鳥の鳴く声、花や果物の香りなどが
暗闇に少しずつ黎明が訪れるように、再び彩を与えてくれ始め
やがて陽の光も感じられるようになりました
枯れ野原のように荒れ放題だった古家の庭にも、
やがてひとつ二つと花が咲いて
今では毎春、様々な樹木や草木が再び、こぼれるばかりに花を咲かせるようになりました
長い歴史の中で、いくつもの集落が栄えたであろう北のまほろばの土地
その土地は、今は無残に姿を変え、そのおおらかな夢は途絶えてしまったかに見えますが、太古の村があった谷には岸辺には、その度に打ちのめされた小さな草花たちが、何千回、何万回も、再び芽を結び、陽のさす方に頭をもたげて、立ち上がってきたことと思うのです
どうぞ今は希望を捨てずにいてください
どんなぬかるみでもいいので 希望をひとつ拾ってください
拾ったら その泥汚れを指先でそっとふき取って、失くさないようにポケットにしまってください
暗い夜がきて、眠れないときには、明かりがなくても、それをポケットからとり出すと、それは小さな灯の光で少しだけ心を照らしてくれると思います
誰も知らない暗闇で、涙を流してそれを眺めるのもいいものです
希望をひとつ持っていることさえできれば、あの花の咲く故郷の、北のまほろばの庭に、もう一度必ず たどりつけると思います
安芸 早穂子 HomepageGallery 精霊の縄文トリップ