テレビ中継でご覧になった方も多いと思うが、去る4月29日、ウィリアム王子とケイト・ミドルトンさんの挙式がロンドンで行われた。幸せなふたりが愛を誓ったウェストミンスター寺院は、イギリスの世界遺産のひとつ。11世紀にエドワード懺悔王が建設し、1066年以来、戴冠式の場となっている、王家とは極めて縁の深い場所である(1245年に再建、以降、幾たびも増改築)。
この寺院と合わせて1987年に世界遺産に登録されたのは、同じ敷地内に建つ聖マーガレット教会と、隣接するウェストミンスター宮殿。ウェストミンスター宮殿の方は、たとえロンドンに行かれた経験がなくても、皆さま、その姿をご存知のはずだ。ロイヤル・パレードの映像にも映っていたし……ん? おわかりにならない?? 答えは、時計台「ビッグ・ベン」で知られる、国会議事堂。イギリスを象徴する建物といっても過言ではない。ウェストミンスター寺院の建設時期と同じ頃に宮殿となり、1529年までその務めを果たしていたのだ。すなわち、ウィリアム王子とケイトさんは、人々の祝福を受けつつ、ご先祖さまに見守られていたというわけだ。ウィリアム王子が婚約決めるまで長い交際期間を経たのは、亡きダイアナ妃の影響が多分にあったと言われている。幼い頃、両親の不和を目の当たりにした彼はどうやら、結婚をおそれていたようのだ。庶民出のケイトさんを選んだのも、伯爵令嬢だった母親の悲劇をふまえてのことだろう。
ウィリアム王子やダイアナ妃以前にも、数々の悲喜劇を重ねてイギリス王室史は現在に至るが、興味深いのは、偉大とは言い難い王が偉大な足跡を残していること。たとえば6人の妻(うち2人はなんと処刑に)と結婚離婚を繰り返したヘンリー8世は、自分の行動を正当化するためにローマ・カソリック教会から離脱。彼が長となった英国国教会現在はやがて、国民の心の拠り所になった。ドイツ生まれのジョージ1世は英語がほとんど話せず、政務にも興味を持たず。その結果、首相を中心とする内閣制度が発足。普請マニアの浪費家ジョージ4世は、ハイド・パークなどの公園やロンドンの美しい街並みをもたらした。
なにがどう転ぶかわからない。東北の今の苦難も、遠い未来、なにがしかの実りにつながるのだと思いたい。遙か遠い縄文時代のできごとだって、21世紀の青森ときっとどこかでつながっているはず……