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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第8回 三内丸山遺跡と月の宴 2009年8月19日

夜の遺跡を訪れるのは まれな体験です。

それが真っ暗闇ならあまり行きたくありませんが、お祭りであればレッツゴーです。

三内丸山遺跡公園では10年以上にわたって満月の夜にお祭りが開催されているのをご存知ですか? 

お月見の宴2009 は 9/5(土)9/6(日)
「じゃわめく! 縄文楽市にぎわい座」
於 三内丸山遺跡公園

【問合せ】 NPO法人三内丸山縄文発信の会
(TEL 017-773-3477)
縄文大祭典の詳細はこちら

このお祭りで体験できることは何から何まで本当に 「縄文探検」!!ということで、私は毎年楽しみにしています。

当日は宴が開くまでに、遺跡保存活用推進室の方の案内で今も調査が続いている発掘現場を巡ることができます。最新の発見ニュースを聴きながら、今歩いているこの土の下に本当に眠っている縄文の村、 その村の姿の片鱗を実際に見ることができるのです。あの六本柱の建物の謎に迫るちょっとしたサスペンスも味わえて、ムラムラとイマジネーションが刺激されます。

もっと謎に迫りたい気分のときは、午後の考古学フォーラムに参加します。

青森のみならず、各地の遺跡からやってきた指折りの考古学者を交えて、最新の発掘報告や白熱した討論を聴くことができます。

 

 

遺跡の丘で石を自分だけの
思い出にするワークショップ

遺跡をもっと楽しみたいときは、 復元された古代の公民館である巨大な竪穴式住居のなかで 親子で楽しめるワークショップの体験をおすすめします。 勇壮な大屋根に覆われたこの建物は、その中に入って何かをする体験をしてこそ 本当の縄文気分を味あわせてくれます。

たとえば 縄文人も聞いた音を探して 野の草や石から生まれる音に耳を傾ける体験。 おおらかな縄文空間で かすかな音に耳を澄ます子供の表情はきっと永遠に変わらないものでしょうね。

 

大型竪穴住居のなかで仮面作りに挑戦

昨年には出土した仮面や土偶からインスピレーションを得て 自分だけの仮面を作る親子ワークショップもさせていただきました。材料を探して普段は行かない遺跡のあちこちを歩くのもまた新しい発見に満ちた体験です。

広々とした丘で、石に自分だけの景色を描くこともしました。

ここで作った思い出を持ち帰ることは いうなれば縄文のテイクアウトかな。

この日ばかりは 復元された縄文の村に子供が走り回り、歓声が響き、音楽がこだまして、数千年のときを経て三内丸山村にもう一度生気がかえります。 竪穴住居の中から縄文人が顔を覗かせて「ちょっと寄っていきな」みたいな。

夕刻になれば 今ふうの照明にかがり火も焚かれて、表情も新たに古代の丘が音楽の舞台になります。 この祭りを毎年楽しみにしている近在の人々が三々五々やってきて、月の出を待ちながら談笑し、草地の広場に腰を下ろしてお弁当を広げ集います。

やがて夕闇に景色が沈む頃、 今宵の演者が古代の丘に登ると 月の祝宴が幕を開けるのです。

討論をした学者も、ワークショップをしたアーチストも、職人も、観光客も、ボランティアのメンバーも おじいさんも子供も 誰もが草地に座って 遺跡の丘の風に吹かれながら祭りを見る体験、それを共有することは そこにいる誰にとってもすてきなことです。それはきっと遺跡にとっても すてきなことでしょう。

最後に恒例 山上進さんの津軽三味線が始まると、私は丘をはなれ遺跡を歩き回ることにしています。

かき鳴らされる津軽の音を聞きながら、復元された縄文の家々の周りを歩いて御覧なさい。屋根のてっぺんに生えている草が揺れるのもまるで風土の音色にあわせているようです。

宴も終焉に差し掛かり、「ねぶたはハネルぞ!」の呼び声で 観客が皆立ち上がるときには 丘の向こうに煌々と満月が浮かんでいます。 その光のなかに、踊っている縄文の村人の姿をふと見た気がするような、そんなゴージャスな縄文体験の夜です。

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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