縁あって イギリスの美しい中世都市 Norwich という町のギャラリーで 展覧会に加えていただいています。
縄文時代からインスピレーションを得た 現代画家たち とでも言う 数人の作家を日本、イギリス、アイルランドなどから呼び集めたモダンアートの展覧会で、テーマは「RE BIRTH 再生」です。
なかなか素敵な空間でした。
http://www.art1821.com/index.php
ギャラリーは中世の趣き濃い旧市街の中心 大聖堂のまん前、町でも一番古い建物の地下にあり、ちょっと神秘的な、素敵な空間でした。
私の絵でモダンアートというのはいささか申し訳ない気がしますが、実は抽象的な表現には以前から大変に惹かれていて、実のところやってて楽しいのはこちらかもしれないんです。
縄文発信の会の有志の方々が 本当に幸運なことに 取れた休暇がたまたま私の展覧会初日ということで 土偶を見て モダンアートを見て さらにアイルランドにケルトの風土も見に行っちゃおう!という ツアー決行となりました。
と、いうわけで 思いがけずオープニングパーティーの夜にギャラリーを訪ねることになったのでした。
ー森の聖母子ー
(テラコッタ・アクリル)
さて、「縁あって」というのは この街で開催されている 土偶展 のことです。大英博物館、東京国立博物館でもあった国宝土偶展に続く 第2弾 縄文とバルカンの土偶展 UNEARTHED がこの町にあるセインズベリー視覚芸術センターで開催されているのです。http://www.scva.org.uk/
菊池さんの最新のお話にも登場している セインズベリー日本藝術研究所は この街の大聖堂の敷地の中にあります。いかにもイギリス的なこの街の、いかにもヨーロッパ的な荘厳な大聖堂のすぐ隣に 私たち日本人でもよく知らないような仔細を極めた日本芸術の研究に精を出すイギリス人研究者たちがいることに なんだか深く感動してしまいます。
今回の土偶展の展示を担当した学芸員アンドリューさんも同研究所の研究員です。 彼を去年の三内丸山お月見大祭に案内したときに いかにも土偶にまつわりそうな 不思議なことがありました。
実はその夏、私は家の玄関で滑ってころんで足の骨を折ったのですが、アンドリューさんも 日本に着いた翌朝に ランニングをしていて 足を骨折。二人でそろって松葉杖での三内登場となったのでした。これを 土偶の祝福ととるか呪いととるかは 私たち次第?
その晩 市内の居酒屋でこの骨折れスコットランド人の若者が ものすごく酒に強いことを思い知りましたが、ノーリッチの街でも やはりパブで彼と遭遇。ウォッカをおごられて いっき飲み でした。
ギャラリーホームページでの解説は・・・
http://www.enjoynorwich.com/
しかし彼は酒ばかり飲んでいるわけではありません。
彼が手がけた展示は 若者らしくダイナミックでイタズラ心があり、モダンアートの作品やアーチストの感覚も取り入れた楽しいものでした。
そもそも セインズベリー研究所設立者のコレクション収集ポリシーが「原始藝術とモダンアートの同居」であったそうです。 セインズベリー夫妻の居間には アフリカの考古遺物や縄文土器の間にブランクーシやジャコメッティの作品がフツーに並べられていたんだとか。
同研究所は設立以来そのポリシーを受け継ぎ、考古遺物を展示する際は必ず 現代芸術にも眼を転じて その系譜と源をそこに探ろうとするのだそうです。
前回の、国宝重要文化財勢ぞろいの「POWER OF DOGU」を第一弾とすると、今回の第2弾「UNEARTHED」は哲学的土偶応用編 になっているといえましょう。
このアニメーションはお気に入りです!
「人はなぜ小さな人の形を作り、なぜそれを壊したのか」という テーマで貫かれた展示は、日本とバルカン諸国の土偶を比較し、それらの共通性に着目して 、先史時代から一気にモダンアートの世界にも飛んでゆきます。
現代の作家の感性に像を結んだ土偶も展示しながら 「ひとがた」のなかに普遍的な人の姿を再投影するような意欲的な試みに感じられました。
言うまでもなく、今回も全体を貫くのは研究所のサイモンーケーナー先生たちの総指揮があってこそ発揮されたチャレンジ精神ではないかと思います。
発案のオリジナリティーと 広い視野、深い洞察の上にたって 考えても見なかった方向から光を当てる・・・museum の展示の可能性を自分たちも楽しんでいるというふうな うらやましい展覧会でした。
安芸 早穂子 HomepageGallery 精霊の縄文トリップ