楽器の起源は古く、ヨーロッパではすでに旧石器時代には骨に穴を空けた笛が見つかっています。数は少ないものの縄文遺跡の出土品の中にも楽器と考えられるものがあります。
石笛(いわぶえ)は石の長辺または短辺、たまに両方に穴を空けたものがあり、県内各地から出土しています。中にはオカリナのようなカタチのものもあります。ヒスイ製の大珠も穴が空いていることから笛ではないかとの指摘もあります。これらのうち、何点かは民俗音楽に詳しい笹森建英さんにより採譜されています。
- 石笛(六ヶ所村富ノ沢(2)遺跡)
- 同石笛の音階
- ヒスイ製大珠(六ヶ所村上尾駮(2)遺跡)
- 同ヒスイ製大珠の音階
石質にも因りますが、強く吹くと高い、金属的な音がでます。現代音楽の広瀬量平さんはヒスイの石笛の音を作品に取り入れています。神秘的な音を出すことができるためか、石笛は縄文時代に限らず、祭祀や儀式の際に使われることがあり、神聖な楽器として扱われています。
現代とあまりカタチが変わっていない、鹿笛も見つかっています。吹くとメス鹿の鳴き声に似た音が出るため、オス鹿をおびき寄せるために使われたと考えられています。ですから、これは楽器というよりも狩りの道具と言った方が良いのかもしれません。他にもムササビのようなカタチの土製品があり、口と尻尾のところに穴があり、吹くと音が出ることから土笛と考える人がいます。
八戸市是川遺跡からは木製の二弦の琴が見つかっています。扁平な板の端には弦を結びつける角のような突起があり、共鳴板は付いていません。ちなみに弥生時代の琴には共鳴板が付いています。この二弦の琴と同じ形状のものが滋賀県の琵琶湖周辺の遺跡から見つかっています。交流の可能性や楽器の形としてほぼ完成していたことなどが考えられます。他に粘土の中に小石など入れた土鈴も見つかっています。
楽器は本来、音を出す目的で作られていますが、それ以外にも敲いたり、こすったりすることによって音が出る日常の生活道具が数多くあります。煮炊きに使われた土器も動物の皮を張ると立派な太鼓として使うこともできます。弓も弦を弾くと音がでます。
祭祀や儀式、あるいは豊かな実りに感謝するまつりの際には楽器や音が出る様々な道具が使われ、時には幻想的に、時には厳かに、そして時には喜びの躍動をあらわす大事な役目があったものと考えられます。
(青森県教育庁文化財保護課長 岡田 康博)