世界遺産暫定一覧表への記載が正式に決定した。9月26日(金)、文化庁の文化審議会文化財分科会において、世界遺産の国内候補リストである、暫定一覧表(暫定リストと呼ばれる)への記載が了承された。これで「北海道・北東北の縄文遺跡群」は、政府やユネスコが認める正式な候補となったわけで、今後世界遺産登録実現に向けて、新たなスタートを切ることになる。
平成17年10月に三村知事が縄文遺跡の世界遺産登録を目指すことを表明して以来、青森県教育委員会では文化財保護課内に世界文化遺産登録推進プロジェクトチームを設置し、まずは暫定リスト入りを目標にさまざまな事業に取り組んできた。私も文化庁から青森県に復帰した、平成18年5月から参加することとなった。当時、文化庁は暫定リストへの追加等については特に予定がないとしており、本県の取り組みも当面は世界遺産に関する一般的な調査研究や縄文遺跡に関する普及、啓発が主なもので、息の長い仕事になるものと思われた。
しかし、事態は急展開した。平成18年9月に文化庁は突然、世界遺産暫定リスト記載については地方自治体からの提案方式とすることを表明した。提案は平成18・19年度の2ヶ年とし、平成18年度については11月末締め切りだという。もし、提案するのであればたった2ヶ月で提案書を作成しなければならない。時間との勝負である。時間の少ない中、本県の提案書「青森県の縄文遺跡群」作成はスタートした。
文化庁では世界遺産は記念物課が所管しており、部門は違ったが4年間、文化財調査官として在籍したこともあって、世界遺産登録実現までには相当の努力が必要であることは感じていたが、一方では、縄文遺跡はその価値を世界に向けて十分主張、発信していけるもので、世界遺産にふさわしいとの思いも強かった。おそらく縄文遺跡の関係者はみんなそう思っていたに違いない。そして、もし日本が、縄文遺跡の世界遺産を目指すのであれば三内丸山遺跡がその中心となるものと漠然とは思っていた。
その思いを実現する機会が突然訪れたのだ。これまでの研究成果を踏まえ、愚直に本県に所在する縄文遺跡の価値を主張すれば、暫定リスト記載への道は開かれると思いながらも、大きな不安がひとつだけあった。(続く)