グリーンマンfromニュージーランド
三内丸山縄文大祭典が今年も盛大に開催されました。
大型復元住居のなかで 恒例ファミリーワークショップを私もさせて頂きましたが、関西という遠隔地住まいの悲しさ、当日飛行機でやってくると はや昼前。今回は「葉っぱでつくる古代の精霊飾り」と銘打ち、遺跡周辺の植物を集めて冠や首、腕飾りを作って森の精霊の気分を味わおうという趣向です。しかし 植物採集をしている時間がない!(汗’)
ところが 前夜から青森で3人の先発部隊が宿泊しているとの情報!彼らの手を借りれば入念な準備ができるぞ との魂胆をもったわけであります。しかもおあつらえ向きに全員が「民族植物考古学者」!
「民族植物考古学者」・・・それってどれ中心?って感じの肩書きですが、どれも中心みたいです。先発部隊とは 私が御用聞きに行く大阪の民博に滞在中のオーストラリアからの外来研究員2氏とその世話役のピーター=マシューズ先生の3人組。彼らはニューギニア島をフィールドとする研究仲間で、かの地の先史時代の植生と当時の人々との係わり合いについて調査をしているそうです。
人が植物を採ったり育てたりして衣・食・住にどのように利用し、互いに影響を受けあってきたかを研究するのが民族植物学者で、それを古代の人について研究するから「民族植物考古学者」。
ま、ややこしい肩書きは置いといて、朝の間に遺跡公園周辺で「葉っぱを集めてくれる?」と3人にお願いしたところ大喜びで即OK。現地に生える植物の詳細な観察をするよいチャンスと言うわけです。
と、いうことで 私が大阪空港を発つ頃にはうきうきした外人民族植物学者部隊がすでに活動を開始。(許可をとって採集しています)
ニューギニアの祭りシンシンから
そのようなラッキーな段取りで、復元大型住居にたどり着くと きれいに仕分けされた植物が並べられ、マシューズ先生が自分を飾るのに余念がありません。これが本当のグリーンマン。
グリーンマン、「森男」の伝説はヨーロッパにあります。「森男」は髪の毛や髭が葉っぱで、木の精霊と思われますが 中世の教会や街角のレリーフにも頻繁に現れ、ちょっと悲しげな、怒っているような顔をして、田園や街の風景に文字通り顔を出しています。
「葉っぱで飾る精霊飾り」は、世界各地に今でも多くあります。草お化けのような集団が練り歩く北欧の祭りの写真も持っていますが、これは殆どなまはげ。ヨーロッパとは思えないインパクトの「草男」たちです。
外人3人部隊の専門であるニューギニア島では「シンシン」と呼ばれる島じゅうの部族の盛装による大集会が有名です。私も写真集を持っていますが、熱帯の森を知り尽くした人間たちがレインフォレストが産するあらゆる色と形を材料に、アートクリエイションの極地を見せて体を飾る、部族のどれもが「これでもかっ!」とものすごい姿を披露しています。これぞ「人と自然の究極のコラボや!」。
「民族植物考古学者」が自分を葉っぱで飾ってお供してくれた今年のワークショップでも独創的な葉っぱの飾りで「盛装」した老若男女が次々と誕生。
そこでマシューズ先生に三内丸山遺跡の植物について感想を尋ねると このように答えて下さいました。「遠く山々まで見渡せる広々とした遺跡で、そこに育つ植物をつぶさに観察することができて私たちは最高に幸せでした!しかしながら、古代人にとって植物は風景を彩るものではなく、暮らしの道具でした。もし私が縄文人であったなら 今日採集した植物のどれもを違う目で見たでしょう。ここは恵まれた土地ですね。人間にとって役立つ植物が多様にあり、四季を通じて様々な形で暮らしを助けたことでしょう。」
三内丸山縄文村でも森男や草女の祭りが執り行われていたでしょうか?
ススキの穂を頭に飾ってニコニコしている縄文の子どもたちが 緑豊かな村の風景をよぎって走ってゆくような気がしました。
安芸 早穂子 HomepageGallery 精霊の縄文トリップ