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連載企画

縄文探検につれてって!-安芸 早穂子-

第41回 素材変われど変わらぬ我が家 ――竪穴住居とカラスの巣―― 2011年11月15日

新建材による現代シティカラスの巣(平野伸明 「野鳥記」 福音館書店刊より)

築半世紀にならんとする古びた我が家に光ファイバーがやってきた時には、ピカピカの未来がきたようでちょっと嬉しかったのですが、近所の公園で暮らすカラスに、引き込み線を喰われてたちまち2回もダウンしました。復旧工事に来たNTTの人は「あ~またもってかれたんですね~天敵なんですよ~カラスのやつらは!」とあきらめにも似た嘆息を漏らしながら嘴で喰いちぎられた黒い線を交換していました。

山の古巣に住んでた頃からから何も変わらず暮らしているカラスどもにさしもの最新鋭デジタルコミュニケーションがひとたまりもなくちぎり取られて巣作りの材料にされてしまうのかと、何か悲しいような可笑しいような気分がしたものです。

と、ところが、写真参照(右上)。これは何なのかおわかりでしょうか?・・・・これらのハンガーは燃えないゴミに出されたのではなく、はたまたモダンアート作品でもありません。これは都会のカラスの巣なのです。
このカラスの「我が家新築の日」が燃えないゴミの日だったのかもしれませんが、とにかく画期的な新建材を発見したものです。そうです、21世紀のカラスはハンガーを束ねるのに光ファイバーを使っているのではないでしょうか!

家でくつろげない?縄文時代の家族タイム(監修 佐原 眞)

山の古巣を捨てて都会暮らしに慣れ、カラスもメタリックに新住宅事情を迎えていたのですね。でも、住んでいるのはやっぱりカラスで今も昔も巣を作って子ガラスを育て、カーカー鳴きながら鋭く懸命に人間の周辺を生きているのです。

私たち人間は雲をつくタワーマンションに住むようになり、お父さんはもはや狩にも行かず、お母さんはどんぐりを拾うかわりにスーパーでレトルトパックの食品を購入、子どもは忙しくて遊ぶ暇もありませんが、しかし、やはりカラス同様、今も昔もかわらず家族で暮らす家を持ちそこで笑ったり泣いたり眠ったり和んだりしながら暮らしています。ちなみにコンクリートの高層にはなりましたが、建設途中に見ると完全な横穴住居ですね、タワーマンションは。

佐原先生が、竪穴住居を現代のLDKジョイント型マンションと並べて、言わばワンルーム的空間で暮らす2つの時代の家族それぞれの居場所と時間の過ごし方を比較してみようと言われたことがありました。

便利になったが やっぱり家族でくつろげない?(監修 佐原 眞)

縄文人の家族は何をするにも、まずその道具から自分で作らなければならなかったので、それぞれたくさんの仕事をこなしながら毎日を暮らしていたようです。ご飯の材料から煮炊きの道具も自家製。なので復元画では、家族団らんというよりは小さな子どもから年寄りまで皆せっせと何かをしているところを描きます。
お父さんもほっとして横になって野球中継を見るわけにはいかなかったし、子どもも子守と手伝いの合間をついてもっぱら大人のまねをして学び遊びをしていたかもしれません。

縄文時代と比べて私たちの暮らしは確かに大きく変容しました。しかし、立てば歩めの親心、ちょっとやさしいお祖母ちゃんや、怒ると怖いお父さんなど今も古代も変わらない不変で普遍の家族の姿はそこにあり続けています。復元画で私が描いているのは「竪穴住居の暮らし」というよりも今の人が見ても微笑んでしまうような縄文時代の「我が家」の暮らしなんだなと近頃大いに思います。

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プロフィール

安芸 早穂子

大阪府在住 画家、イラストレーター

歴史上(特に縄文時代)の人々の暮らしぶりや祭り、風景などを研究者のイメージにそって絵にする仕事を手がける。また遺跡や博物館で、親子で楽しく体験してもらうためのワークショップや展覧会を開催。こども工作絵画クラブ主宰。
縄文まほろば博展示画、浅間縄文ミュージアム壁画、大阪府立弥生博物館展示画等。

週刊朝日百科日本の歴史「縄文人の家族生活」他、同世界の歴史シリーズ、歴博/毎日新聞社「銅鐸の美」、三省堂考古学事典など。自費出版に「森のスーレイ」、「海の星座」
京都市立芸術大学日本画科卒業
ホームページ 精霊の縄文トリップ www.tkazu.com/saho/

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