wool,cube,wool!(以下wool!さん)さんは、古着やハギレをコラージュのように切り貼りし、バッグやアクセサリーを作るソーイングユニット。
フリルやポンポンなど見慣れた素材が彼女たちの手にかかると、まるでポップアートのような刺激的な作品に生まれ変わります。ヒョウ柄にゴリラのプリントを重ねたり、ゼブラ柄にライオンのプリントを張り合わせたり、そんな過剰すぎるほどの組み合わせをオシャレに転じさせるセンスでは右に出るものはいません。
この過剰さは、言うならば縄文土器や土偶の造形にも通じます。
緻密な模様と独特の顔面を持つ遮光器土偶などは過剰の極致。
wool!さんと遮光器土偶は、きっと相性がいいハズ。
ちょっと強引ですが、編集者の勘を頼りにwool!さんに連絡をとってみると、やはり「土偶、興味あります」とのこと。
そして、「青森に行って縄文をモチーフになにか作ってみたくありませんか?」という問いかけを、wool!さんは快諾してくれたのでした。
青森の土偶といえば、有名なのが片足の遮光器土偶。
まずは、イメージを高めるために遮光器土偶が出土した木造町へ。
ここには知る人ぞ知る名物駅があります。
遠目でも一目瞭然な土偶の駅舎、木造駅。
東京国立博物館に収められている実物は高さ34.2cmですが、
ここでは高さ17m。近づくと、大きすぎて全体が見えません。
このエリアの人々は遮光器土偶を親しみを込めて「シャコちゃん」と呼びます。
辺りをよく見ると、マンホールの蓋や町内会の掲示板など、さまざまなところにシャコちゃんがあしらわれ、
お土産屋さんの店頭にはシャコちゃんのTシャツやグッズも!
地元の人々の遮光器土偶に対する愛情の一片を見たという感じ。
翌日は、弘前市の津軽藩ねぷた村へ。
青森には3タイプのねぶた(ねぷた)があり、横広がりの青森ねぶた、縦に長い五所川原ねぷたに対し、弘前では扇形のねぷたが夏の夜を彩ります。
灯りのなかに浮かび上がる幻想的なねぷたの傍らに、ちいさな金魚型のねぷたがありました。
針金や竹ひごで骨組みを作り、紙を張り付けて絵を入れるねぷたの原型と言われるもので、
藩政時代から津軽の庶民のおもちゃとして、親しまれてきた由緒ある伝統工芸品です。
実はこの金魚ねぷたをベースに、遮光器土偶のねぷたを作るというのが今回の旅の目的。
wool!さんが連載している「コラボデート」というエッセイで取り上げていただけるのです。
体験コーナーに行くと、あらかじめ寸法を指定した遮光器型のねぷたの原型がズラリ。
教えてくださるのは、ねぷた好きが高じて絵師になったという溝江さんと、ねぷた村に勤めながら干支ねぷたのデザインも手がける檜山さんです。
おふたりの指導のもと、本邦初の土偶ねぷた制作がはじまりました。
ねぷたの絵付けは、墨入れ→ロウ引き→彩色の手順で進みます。
まず、鉛筆で下絵を描いてから、墨を含ませた筆を紙の上に置きます。
スーッと墨が紙にしみ込んでいく感触がたまらなく心地よく、
書き込みに力が入ります。
特徴的な目を描くと、なんとなく遮光器らしくなってきました。
次に、温めたロウを筆に含ませ、ロウ引きを行ないます。
ロウは水をはじくため、塗ったところは白く抜かれます。
水玉やストライプなど、模様を入れることもできるわけですが、
墨入れの時点で書き込みに夢中になってしまったため、
ロウをどう入れるか、バランスをとるのに四苦八苦。
後戻りはできないのです。えーい、ままよ!
いよいよ彩色です。染料は光を通すように透明度が高く、これぞ、ねぷたカラーというような、鮮やかな色みがムラなく広がります。
ロウを入れたところは色をはじくと同時に、隣り合う色同士が混じり合わないようにするため。
逆に、色同士をにじませてぼかすという技もあります。
彩色を終えると、ねぷた度もグッと増して。
最後に、両手と片足をつけて、
wool!さんが用意したレースペーパーや折り紙、蛍光シールなどを飾り付けます。
ひもで吊り下げて、シャコちゃんねぷたの完成!
本来のねぷたとは異なる摩訶不思議なオーラが出ています。
縄文とねぷたにどっぷりつかった青森ツアー。
wool!さんのもの作りによい刺激になればいいのですが…。
それから3か月ほどたったある日、wool!さんから展示会のお知らせが届きました。
「縄文 意識のシリーズ、つくってみました」と、あります。
意識のシリーズって?と思いながら、恵比寿の会場に向かうと、
ありました「縄文 意識のシリーズ」が。
網目紋様のチロリアンテープがさりげなくあしらわれたレッグウォーマーや手袋、ケープ、
縄状の太いひもで作られたネックレスなど、どれもファッションのアクセントにぴったりな小物たち。
「網目や縄ひもってかわいい」と、意識にストンと落ちて浸透します。
まだまだ衰えないフォークロアファッションの文脈にも落とし込まれていて、活躍しそう。
ファッションに縄文時代からあるエッセンスを取り入れて、
2012年もおおいにサバイブしたいものです。
エンジョイ縄文!
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