日本には遺跡(文化財保護行政では埋蔵文化財包蔵地と呼ぶ)がどれくらいあるのだろうか。文化庁によると、平成19年2月現在、全国には約46万カ所の遺跡があるという。我が青森県にも約4300カ所の遺跡がある。遺跡と言っても、時代や種類は様々である。三内丸山遺跡やつがる市亀ケ岡遺跡のように縄文時代のものもあれば、列島北限の水田跡が見つかった田舎館村垂柳遺跡は弥生時代、五所川原市十三湊遺跡や安東氏の居城と考えられている福島城は中世、そして桜の名所で全国的に有名な弘前城は近世のものである。また、集落跡、貝塚、環状列石、水田跡、古墳、窯跡、城跡など種類も多様である。そして、地面に埋もれているものもあれば、石垣や堀跡のように、現在でも当時に近い状態で見ることができるものもあり、その状態も様々である。
遺跡はその存在が明らかになり、周知されると文化財保護法上の保護の対象となる。以前は国が遺跡の認定を行っていたが、地方分権に伴い、現在は都道府県教育委員会が遺跡の認定を行っている。また、遺跡に認定しても、その土地所有者に個別に通知されることはほとんどなく、知らないままに遺跡の上で生活している場合もある。遺跡は国民共有の財産であり、そのままの状態で保存する、現状保存が原則である。しかし、開発等によって現状保存ができない場合にはやむを得ず発掘調査を行い、記録として保存される。日本で行われているほとんどの発掘調査は開発行為に伴う事前の発掘調査である。日本では年間約8000件、このような発掘調査が行われている。このような場合、発掘調査の経費は原則として、開発を行う事業者が負担することになる。遺跡は国民共有の財産であることから、このような方法も当然と言える。
数ある遺跡の中で、重要なものは法律に基づいて史跡に指定され、県内には現在18カ所の史跡があり、国内に1631カ所の史跡がある。史跡内では保護のため、土地の利用について様々な制限があり、現状を変更する際には文化庁の許可を受ける必要がある。史跡の中で、特に重要なものについては特別史跡に指定され、現在61カ所ある。史跡に比べて、数が極めて少ないことから特に重要で、価値の高い遺跡が指定されることが判る。縄文遺跡では、三内丸山遺跡、長野県茅野市尖石遺跡、秋田県鹿角市大湯環状列石のたった3カ所が特別史跡に指定されているのみである。まさに国宝級の遺跡と言える。平成12年、三内丸山遺跡はそれまでの調査成果が評価され、縄文遺跡としては実に44年振りに特別史跡に指定された。縄文遺跡の特別史跡指定はもうないのではないかと思うほどそのハードルは高く、それこそ世界遺産になるよりも難しいものだと当時は思っていた。