悦びとも哀しみともとれる表情
弱々しく微笑むようであり、
雄々しく叫んでいるようでもあり、
充足して満悦げに見えるかと思えば、
悲嘆の吐息を漏らしているようにも見える
何かを求めて止まないようであり
何もかも投げ出して虚ろなようでもあり
母のようであり、父のようでもあり
人のようであり、精霊のようでもある
瞑想しているようでもあり、取乱しているようでもあり
老人であって、赤子
あらゆる人の生い立ち、運命を背に負って
どっしりと立っていたり、よろよろと立てなかったりする
そもそも顔が無かったり、手や足がもがれていたりもする
それらが据えられるこの世界が
整然としたコスモスであり また混沌のカオスでもあるように
土偶が孕んでいるものもコスモスでありカオスであるらしい
覆いかぶさる世界に巻き起こる必然や不条理や
それらが人に巻き起こす壮絶に様々な心の風景を引き受けて
古代の人の手指から生まれた小さく、普遍的な、
どこにでもいて どこにもいない
なにものかが
クリスタルのケースでライトに照らし出されながら
今日も立ちつくしている
安芸 早穂子 HomepageGallery 精霊の縄文トリップ