標高650mの津軽峠から眺める山容はダイナミックで、あの山の向こうが日本海であることも忘れることがある。あたかも人格をもつように厳として立ちはだかるようだ。
この津軽峠には密やかで閑静な森がある。国から貸与された林班で、名づけて「エコ・遊々の森」である。多分、標高が680mに近いのだが、津軽峠から徒歩20分ほどで平らなエリアに行くことができる。標注もなく、特に道らしい道も作らないことが私たちのポリシーです。踏み固められないためにも大勢のお客様の案内はしていない。観光地図にも紹介しないシークレットゾーンなのです。体力に心配があってもゆったりと森の精気を浴びてもらえる緑の空間は「大人のかくれ家」にもなるのです。
ここは、劣悪な自然環境下で生き続けたブナが繁茂し、原生度の高さは抜群である。ここでは、ゆったりと持参したコーヒーを体に流し込みながら、緑の香に身を委ねる至福の時間を過ごすことができるのです。暗門の滝コースに見られる硬い路面と雑踏に疲れることもなく、自分だけの空間や時間を独占できる贅沢な時間が保証されるエリアです。風に揺れ梢で光るブナの葉、時に聞こえる野鳥の歌声に心が癒される。ここの風こそ縄文を彷彿とさせてくれる風。
ブナの枝が適度に重なったドーム状の樹下は、多少の雨でも濡れることもなく、心地よさを満喫できることは幸せの一言に尽きます。一人で逍遥することが出来るように周回コースが僅かに整備されているだけの森ですが、何とも心安らぐ時間が持てるのです。
私のスタッフたちは、ハンモックを吊りたいとはしゃいでいるが、そんな時間を調達できるほど暇ではないことが残念なことです。せめてお客様にはそのような時間を提供できればと考えているところです。ここは昔から熊の住み処であったことは言わないようにしている。