自然界のことだから・・・とアバウトに評価してしまいがちな自然です。気分的には晴天の自然を堪能したいのが人情ですが、そこは自然の事だけに人様の思いのままには行かない。古い歌謡に「雨降れば雨に泣き 風吹けば風に泣く・・・」とあったが、人々は自然の脅威にお慄き恐れ照り付ける太陽に感謝しながらも日照りに嘆いてきた。良くも悪くも自然の趣くままに身をまかせてきたのです。
それは古代も現代も変わりなく続いています。白神山地を訪れる多くのお客様の期待も時として増水や落石という危険を伴う事態をまえに望みが頓挫することがあるのです。残念なことですが期待を裏切られたお客様の無念さは計り知れないのです。「お金がもったいない」「二度と来られないのに」とやり場のない苦情の矛先が私たちに向けられることも少なくない。心の中では「命とお金のどちらを取るの?」と思いながらも、事態の収拾に言葉を捜すことになるのです。
私たちの仕事はお客様のニーズを満たす努力と、お客様の安全を担保することが優先されなければ成り立たないのです。そのためにも気象学を学び、危険を察知する知識を貯え、万一のための装備を着装し用具の点検と訓練を重ねていることは外から来られたお客様方には見えない裏側があるのです。その技術的精神的な訓練の成果が判断を下すのです。私たちには「せっかくおいでになったのに気の毒だから・・・」という曖昧な妥協はあり得ないのです。
晴れた日はラッキーです。緑が輝き渓谷の流れは陽光をうけて照り返して輝くからです。足取りも軽く陽光を浴びながら説明をしながらの散策でも私たちの神経はピリピリしています。殊に高齢の方が多い時にはその緊張が高まるのです。出発前に注意をしていますが脱水での「熱中症」の危険があるからです。時に給水を呼びかけますが、後はお客様の判断に委ねることしかありません。晴れの日も、雨の日も気を抜く瞬間はありません。それでも楽しんでいただくことを心にとめて・・・。
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