この秋、アサヒのスーパードライを買って飲むと、
青森県ではそのビール1本の売り上げのうち、
1円が遺跡の保存活動に寄付されるそうなんです。
な、何故ビールの売り上げが遺跡の保全活動に!? い、遺跡とビール……!?と。
驚かれる方も多いと思いますが。なんと。
アサヒビールの「うまい!を明日へ!」プロジェクトは、
アサヒスーパードライの売上げの一部を、全国47都道府県の自然や環境、
文化財等を未来に継承していく活動に寄付し、応援するプロジェクトなのです。
青森県では平成21年9月下旬から11月下旬に製造し販売した、
「アサヒスーパードライ」缶500ml、缶350ml、大びん、中びんの1本につき1円が、
春に実施された第一弾に引き続き、
「『青森県の縄文遺跡群』世界遺産をめざす会」に寄付され、
縄文遺跡群の保全活動に活用されるんだそうですよ!
おお、保全活動……。縄文まわりの活動で何が一番大事かっていったら、
保全活動じゃないですか。
だって、遺跡は放っておいたら草が生えて荒れ放題になっちゃうし、
雨風で風化しちゃうから冬の間は土の中に埋め戻さなきゃいけないし、
それに伴ってむちゃくちゃ人件費かかるし。
三内丸山遺跡の大型竪穴住居だって、手入れしなければ
いつ老朽化が進んで立ち入り禁止になるか、わからないんですもの。
春に実施された「うまい!を明日へ!」プロジェクトでは、ビール1缶につき1円。
全部で250万円以上が縄文遺跡の保全活動に寄付されたとのこと。
どびっくりです。
この不況の世の中で、その売り上げのうち1円を寄付しようだなんて。
一体、どんな会社なんだ? アサヒビールって。
そんな思いで、アサヒビール青森支社長の菅原雅之さんと対談して来ましたら……、
えらい、のどかで。頭がいい人だったのです……菅原さんは。
私が作家の田口ランディさんと「縄文友の会」を結成して、一番に思ったのが、
「この遺跡がいつまでも青森の山中で、自然の中で息づいていてほしい」
ということでした。
静かに神々しく並ぶ、縄文人たちが手で運んだ、石の遺跡。
そこで一緒に握り飯を食べて、心地よい空気を感じ、ボンヤリするために。
どうしたら「建物を建てずに」、遺跡を保全してもらえるのだろうか? と。
一生懸命考えていました。だって、遺跡で食べるおにぎりの味は、
最高なんですから。
しかし、自然の状態に見える遺跡というのは、
実をいうと誰かの手によって美しく保たれているわけで。
縄文時代と同じ景色を見ようとしたら、
埋め戻された石を、掘り起こさなきゃいけないわけで。
お金をかけないで遺跡を保全しようと思ったら、逆にガラス張りの建物でも造って、その中に遺跡を閉じ込めておいた方がいいくらい、大変なのです。
自然のままで残す「保全」という活動は、涙が出るほど地道です。
「ガラス張りの建物なんか造らないで!」と言うのは簡単だけど、
だとしたら一体、どうしたらいい?
その答えを、アサヒビールは提示してくれたのでした。
「アサヒビールを飲んだら今秋、1本につき1円が縄文遺跡の保全活動に、
寄付されます。」
これは、アサヒビールが考えた地域への「恩返し」なのだそうです。
そして菅原さんが語ったのは、将来を担う子供達のこと。
合掌土偶の美しさや、縄文の漆の赤の美しさ。縄文人が食べていた食の文化史。土器の作り方。「その青森県の財産である「縄文」という文化を、子供達に伝えていくのが大事だと思っているんです」と、菅原さんは言ったのでした。
子供達がそれを覚えていてくれたなら、縄文遺跡の未来はとても。
あかるいものに、なる気がしたのでした。